「は」と「が」は何が違いますか?
どうしてこの文型は「が(または「は」)」ですか?
日本語を教えていると、学習者から一度は聞かれる質問…そして説明するのが難しい質問でもあります。
この記事では、日本語教師を目指している方や、外国人に「は」と「が」の違いについて聞かれて困った!という方に向けて、「は」と「が」の使い分けをできるだけ簡単に解説していきます。
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目次
「は」と「が」の基本的な違い
そもそも「は」や「が」はどちらも助詞なのですが、実は助詞の種類が違います。
「が」は格助詞、「は」はとりたて助詞と呼ばれ、本来はまったく別のものです。
「は」と「が」の使い分けを考える前に、まず「は」、「が」それぞれの働きについて解説します。
格助詞の「が」
まず格助詞というのは、名詞と動詞などの述語を結びつける働きがある助詞のことです。
上の例を見てみると、「作っている」という述語に、「お母さん」「台所」「晩ごはん」という名詞が結びついています。
これらの名詞について、動作をする主体や対象、場所などをあらわす働きを持たせるものが格助詞です。
日本語の格助詞には「が」のほかに「を、に、へ、で、と、から、まで、より」があります。
では格助詞の「が」にどんな働きがあるのかというと、述語の主体を表します。
文を作るには必ず「何かをする」主体(人や物)、「ある/いる」主体、「なる」主体が必要なのですが、このような主体は普通「が」で表されます。
とりたて助詞の「は」
一方、とりたて助詞というのは、話し手の捉え方を暗示する助詞のことで、古典や学校の国語では「副助詞」や「係助詞」などと呼ばれています。
代表的なものに「も、だけ、しか、ばかり、こそ、さえ…」などがあり、「は」もこのとりたて助詞の一つです。
では「は」は何を表すかというと、文の主題を表します。
主題とは「何について述べるのか」、つまり話のテーマで、後ろにはそのテーマについての解説が続きます。
この文では「お母さん」について述べているということになります。
分かりにくい場合は、会話で考えてみましょう。
子どもがお母さんを探して「お母さんは?」と聞いたとき、おそらく日本人であれば以下のように答えるはずです。
このとき会話の主題は「お母さん」であることがわかりますよね。
では子どもが「晩ごはんは?」と言ったらどうでしょうか。
「晩ごはん」について話したいので、「お母さんは…」とは言いません。
「を」の代わりに「は」がついて文頭に来ることで、「晩ごはん」が会話の主題になっています。
お分かりのように、「は」は話の主題が何かによって「が」だけでなく「を」の代わりにも使われます。
イメージとしては文の主題であることを示すために、「が」などの格助詞の上に「は」を張り付けているような感じです。
そもそも「は」と「が」が混同されやすいのは、本来格助詞「が」で表される出来事の主体が話の主題とイコールになっている場合が多いからです。
また、英語などの主語(subject)が「は」と「が」どちらにも対応するように見えるから、という理由もあるようです。
ここまでで「は」と「が」は、根本的に考えるレベルが違うということがお分かりいただけたかと思います。
でも、これだけでは「は」と「が」どちらを使えばいいか判断しづらいですよね。
ここからは、「は」と「が」を使い分けるための基本的なルールを紹介します。
「は」と「が」の使い分け①:情報のルール(新情報か旧情報か?)
まずは、文中の情報に関するルールです。
「伝えたい情報(新情報)には「が」、すでに分かっている情報(旧情報)には「は」を使う」
話し手は知らない情報を主題にすることはできないので、「が」を使います。
この2つの文の違いを考えてみましょう。
上の文はお互い「あの人」を見ている状況で「あの人」について教える場合です。
つまり「あの人」はもうお互いにわかっている情報、伝えたいのは「社長だ」という情報です。
下の文は、社長がいる場所で、社長がどの人か知らない人に「あの人だよ」と教える場合です。
つまり、「社長」はもうわかっている情報、伝えたい情報は「あの人」です。
これらのことをざっくりまとめると以下のように言えます。
「は」の文では、伝えたい情報は「は」の後に来る。 「が」の文では、伝えたい情報は「が」の前に来る。
「は」と「が」の使い分け②:文の性質のルール(現象文か判断文か?)
次に、文の性質に関するルールです。
「現象をそのままいうときは「が」、判断、評価したときは「は」を使う」
見たままの状態をそのままいう文(現象文)の場合、「が」を使います。
上の例のように何かを発見した場合によく使われます。
一方で、見たものを認識して一般的な性質や属性についての判断を言う場合、「は」を使います。
形容詞文や名詞文は、そのもの(人)の性質や属性を表すことが多いので、以下のように言えます。
形容詞文と名詞文は基本的に「は」を使う。
「は」と「が」の使い分け③:文の構造のルール(
「は」と「が」に関する文法上のルールもあります。
「従属節・名詞修飾節の中では「が」を使う」
「~たら、~と、~ので、~なら」のような従属節の中と、名詞修飾節(連体修飾)の中では「は」は使えません。
は(が◯)うちに来たら、お茶を出してください。(〜たらを使った文)は(が◯)行ったことのある国は、日本だけです。(名詞修飾節の文)
これは、基本的に文の主題は主節に来るためです。
以上が、「は」と「が」の基本的な使い分けのルールです。
ここからは「は」と「が」それぞれの持つ、そのほかの用法について説明します。
「は」と「が」の使い分け④:覚えておきたいそのほかの使い方
対比の「は」
実は「は」には主題以外に対比の働きを表すことがあります。
「ひらがな」と「漢字」を対比させて言いたいので「は」を使っています。
使い分け②で現象をそのままいうときは「が」、「雨が降っている」という例を出しましたが、「雨は降っている」というと、「雨は降っているが、雪は降っていない」のような他のものと対比しているニュアンスになります。
排他の「が」
格助詞「が」にも主体以外の働きがあります。
排他(または総記)と呼ばれ、いくつかの候補の中から「まさにこれ!」と示すような働きです。
そのため排他の意味で「が」を使うと「ほかならぬ~」というようなニュアンスが出ます。
これも先ほど「彼は社長です。」という例を出しましたが、ここで「が」を使うと、「ほかの誰でもなく、彼が社長だ」という排他の意味になります。
対象の「が」
また、格助詞「が」には対象の働きもあります。
「好きです」、「上手です」、「わかります」、「見えます」などは対象を格助詞「が」で表すことが決まっています。
以上が「は」と「が」の違いについての解説でした。
実際にはもっと細かいルールがいろいろありますが、外国人に「は」と「が」について質問されたら、まずはここで紹介したルールのどれかにあてはまらないか考えてみましょう。
まとめ
- 「が」は主体を表す格助詞、「は」は主題を表すとりたて助詞
- 伝えたい情報には「が」、すでに分かっている情報には「は」を使う
- 現象をそのままいうときは「が」、属性、性質をいうときは「は」を使う
- 従属節と名詞修飾節の中では「が」を使う
- 対比を表すときは「は」、排他を表すときは「が」を使う
- 「好きだ、わかる」など対象に「が」をとる動詞や形容詞がある
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