生活の日本語(生活のための日本語)という言葉を聞いたことはありますか。
日本で暮らしている外国の人は増えたなあ….
日本語でコミュニケーションとれないと生活するのに苦労しそう….
確かに、日本の公用語は日本語ですから、日本語ができないと彼らも何かと大変でしょう。
本記事は日本で暮らす外国の人々にとっての「生活の日本語」についてデータを交えて解説。
日本語教師の方、ボランティアで日本語を教えている方、パートナーやご家族が外国籍の方、生活の日本語について関心のある方はぜひ最後までお読みください。
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目次
生活の日本語とは?
「生活の日本語(生活のための日本語)」については、さまざまな教育機関で研究や取り組みが行われています。本記事で取り上げるのはその代表例です。
JF生活日本語Can-do
1つ目は「JF生活日本語Can-do(JF Can-do for Life in Japan)」です。
国際交流基金「JF生活日本語Can-do」は、日本での生活場面を中心に、特定技能の資格等で来日する方に求められる基礎的なコミュニケーションを例示したものです。また、特定技能での来日に限らず、日本で生活する外国人が来日前にどのような日本語の能力を身につけておく必要があるのかを具体的に知る手がかりとしても活用できます。
JF生活日本語Can-doでは、日本での生活・就労場面における日本語によるコミュニケーションを「出かける」「暮らす」「働く」の3つの大カテゴリーに分類しています。
「生活のための日本語」に関する調査研究
2つ目は「生活のための日本語」に関する調査研究です。
国立国語研究所日本語教育基盤情報センターでは、2006年以来、日本語を母語としない外国人が日本社会の一員として地域社会に根付き、職場や学校等で活躍するために必要な日本語能力(生活のための日本語)とその育成方法に関する研究を進めています。
同研究グループは、2008年10から12月にかけて、外国人と日本人のそれぞれを対象に全国規模のアンケート調査を実施。外国人においては、全国20地域、105項目(14場面)の言語行動について集計・分析しました。このうち「日本語でできない人が多い行動」「日本語でできるようになりたい人が多い行動」それぞれ上位10位は以下の通りです。
「生活者としての外国人」のための日本語教室空白地域解消推進事業
3つ目は「生活者としての外国人」のための日本語教室空白地域解消推進事業です。
文化庁では、「生活者としての外国人」のための日本語教室空白地域解消推進事業として、日本語教室が設置されていない国内の地域に居住している外国人等が日常生活を営む上で必要となる日本語能力を習得できるよう、日本語教室の設置やICTを活用した日本語学習コンテンツの開発等を行い、日本語学習環境の整備を図ることを目的としています。
具体的な取り組みは「地域日本語教育スタートアッププログラム」「ICTを活用した『生活者としての外国人』のための日本語学習コンテンツの開発・提供」「空白地域解消推進セミナー」「日本語教室開設に向けた研究協議会」の4本柱です。
生活の日本語を学べるテキスト6選
ここでは、生活の日本語を学べるテキストを紹介していきます。
『いろどり 生活の日本語』
『いろどり 生活の日本語』は、外国人が日本で生活や仕事をする際に必要となる、基礎的な日本語のコミュニケーション力を身につけるための日本語教材です。
日本語を使って実際の場面で「できること」(Can-do)を増やすのを学習目標としています。買い物をしたり、遊びに行ったり、日本の生活のさまざまな場面の日本語を学べます。
教材の巻末にCan-doチェックがあり、Can-doが達成できたかどうかを自己評価できるようになっているのが特徴です。テキストは「入門」「初級1」「初級2」があり、それぞれ9つのトピック、全18課から構成されています。4技能をバランスよく学べます。
『まるごと 日本のことばと文化』
『まるごと 日本のことばと文化』シリーズは、CEFRのを採用した「JF 日本語教育スタンダード」に基づいて制作されている、日本語と日本文化をバランスよく学べる教科書です。
この教科書では、実際の場面で日本語を使ってコミュニケーションできるようになることを目指しています。到達目標は課題遂行(Can-do)の形で設定されています。
「入門」では、あいさつ、趣味などで簡単なコミュニケーションをします。「中級」では、生の日本語を読んだり聞いたりしながら、自分のことを長く話せるように練習できます。
『NIHONGO FUN & EASY 2nd Edition』
『NIHONGO FUN & EASY 2nd Edition』は日本語入門初心者レベルのテキストです。実践かつ好奇心をくすぐるような大人向けのテキストとなっています。
本書は、日常生活で必要な日本語を知りたい順ですぐに学べるようになっています。「場所を尋ねる」「買い物」「予定や行動について話す」「世間話をする」など全12ユニットで構成。さまざまな場面、機能、トピックがあるので効果的に学べます。
文法や例文は英語で解説されています。ローマ字が併記されているので、日本語が全く読めない人でも取り組みやすいのが特徴です。
『外国人住民のための日本語教室 基礎クラスⅠ・Ⅱ』
『外国人住民のための日本語教室 基礎クラスⅠ・Ⅱ』は京都府国際センターの日本語教室で使用されているテキストです。文化庁「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案に基づいて作成されています。
このテキストは、来日して間もない外国人が生活する上で必要なことを「できるようになる」ことに重点を置いているのが特徴です。テキストは2部構成、全40課となっています。
「クリニックで診察を受ける」「携帯電話の契約ができる」「再配達の依頼ができる」など具体的な日常生活場面での会話を学べるようになっています。
『生活日本語テキスト なでしこジャパニーズ』
『生活日本語テキスト なでしこジャパニーズ』は公益財団法人 神戸国際コミュニティセンターが作成している日本語のテキストです。日本の生活で簡単に使える日本語を集めています。
口頭練習、会話練習、実演などがあり、最低限必要となる会話や生活知識について学べます。
全12課で各課それぞれ完結しているので、必要とする課だけを学ぶことも可能です。入門、初級レベルから中上級レベルまで幅広く使用できます。
『できる?できた!!くらしのにほんご』
『できる?できた!!くらしのにほんご』は公益財団法人兵庫県国際交流協会で使われている日本語の教科書です。文化庁「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案を参考に作成されています。
この教科書は生活場面に密着したコミュニケーション活動を可能にすることが目標です。その場面に必要な日本語を学ぶだけでなく、情報を知る、調べることができるように編成されています。
「郵便局や銀行を利用する」「役所へ行く」など生活に必要な10の場面を学べます。
まとめ
本記事は日本で暮らす外国の人々にとっての「生活の日本語」について解説してきました。
内容をまとめると….
- 「JF生活日本語Can-do(JF Can-do for Life in Japan)」「『生活のための日本語』に関する調査研究」「『生活者としての外国人』のための日本語教室空白地域解消推進事業」:順に、国際交流基金、国立国語研究所日本語教育基盤情報センター、文化庁が行っている取り組み
- 『いろどり 生活の日本語』『まるごと 日本のことばと文化』『NIHONGO FUN & EASY 2nd Edition』『外国人住民のための日本語教室 基礎クラスⅠ・Ⅱ』『生活日本語テキスト なでしこジャパニーズ』『できる?できた!!くらしのにほんご』:生活の日本語を学べるテキスト
日常会話が学べる「つながる ひろがる にほんでのくらし」は文化庁が公開している動画学習サイトです。パソコンやスマートフォンから無料で学ぶことができます。日本語・英語・中国語・ポルトガル語・スペイン語・ベトナム語に対応しています。
「やさしい日本語」は、普通の日本語より簡単であり、外国の人にも分かりやすいように配慮した日本語のことです。生活の日本語と併せて理解しておきましょう。
池田早織
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