日本語教育におけるコース・デザインとは?わかりやすく解説!

日本語教育におけるコース・デザインとは?わかりやすく解説!

日本語教育能力検定試験の勉強をしていると「コース・デザイン」が登場してきます。

コース・デザインは聞いたことがあるけど….
いまいちよく分からない….

このように感じている方もいらっしゃると思います。

本記事は「日本語教育におけるコース・デザイン」についてどこよりもわかりやすく解説。

コース・デザインについて学びを深めたい方、日本語教育能力検定試験の対策をされている方、検定試験を受験しようと考えている方は最後までお読みください。


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コース・デザインについて理解しよう

「コース・デザイン」はその名の通り、コース(科目)をデザインすることです。

コースとクラスは異なります。コースは学期にわたって行われる授業のことを指します。
例えば、3カ月で週4コマの授業であれば、全48回のコース・デザインを考えることになります。

検定試験の出題範囲において、コース・デザインは「言語と教育」に該当します。
検定試験対策としては、コースの設計から評価の設計までの流れを理解しておくことが大切です。

区分主要項目
社会・文化・地域世界と日本の社会と文化/日本の在留外国人施策/多文化共生(地域社会における共生)/日本語教育史/言語政策/日本語の試験/世界と日本の日本語教育事情
言語と社会社会言語学/言語政策と「ことば」/コミュニケーションストラテジー/待遇・敬意表現/言語・非言語行動/多文化・多言語主義 
言語と心理談話理解/言語学習/習得過程(第一言語・第二言語)/学習ストラテジー/異文化受容・適応/日本語の学習・教育の情意的側面
言語と教育日本語教師の資質・能力/日本語教育プログラムの理解と実践/教室・言語環境の設定/コースデザイン/教授法/教材分析・作成・開発/評価法/授業計画/教育実習/中間言語分析/授業分析・自己点検能力/目的・対象別日本語教育法/異文化間教育/異文化コミュニケーション/コミュニケーション教育/日本語教育とICT/著作権
言語一般言語学/対照言語学/日本語教育のための日本語分析/日本語教育のための音韻・音声体系/日本語教育のための文字と表記/日本語教育のための形態・語彙体系/日本語教育のための文法体系/日本語教育のための意味体系/日本語教育のための語用論的規範/受容・理解能力/言語運用能力/社会文化能力/対人関係能力/異文化調整能力

コース・デザインの3つの段階(コース/授業/評価の設計)

コース・デザインは「コースの設計」「授業の設計」「評価の設計」の3つの段階があります。
それぞれの段階に関連性があるかどうかを確認しながら、コース・デザインをしていきます。

コースの設計

コースの設計で行うことは「コース目標の設定」と「目標レベルの設定」です。

コース目標の設定は国際交流基金が公開している「Can-do」や「JFスタンダードの木」などを参考にします。国際交流基金が運営している「みんなのCan-doサイト」では、コースの目標やレベルに合ったCan-doを確認することも可能です。

目標レベルの設定は「CEFRの全体的な尺度」や「CEFRの自己評価表」などを使います。

授業の設計

授業の設計で行うことは「各授業の配置」「各授業の目標設定」「学習内容の検討」です。

コースの設計同様、授業の設計でも「Can-do」や「JFスタンダードの木」を活用できます。
口頭会話であれば「JF日本語教育スタンダード準拠ロールプレイテスト」も有効です。

授業の設計では、語彙や文法などの目標達成に必要な言語項目、会話などを作っていきます。

評価の設計

評価の設計では「いつ評価するか」「どのような方法で評価するか」「評価項目や評価基準はどうするか」「ポートフォリオの活用方法はどうするか」を踏まえて設計していきます。

「JFスタンダードの木」を参考にしながら「評価シート」を作ったり、スピーキングの評価をする場合には「共通参照レベル:話し言葉の質的側面」を活用しながら、正確さ、流暢さ、やり取り、一貫性を見ていくこともできます。

さらに言うと、コース・デザインは、コースの設計をする前から始まっています。
よりよい授業を行うためには、学習者の調査を行って、シラバスをデザインして、カリキュラムをデザインして、授業を実施して、授業を評価する、この流れが大切です。

コース・デザインで行う調査(ニーズ/目標言語/目標言語使用/レディネス調査)

コース・デザインをするにあたり、コースを受講予定の学習者の情報をきちんと把握しておくことが必要です。ここでは、その核となる調査をまとめて紹介していきます。

ニーズ調査(ニーズ分析)

「ニーズ調査」は学習者の学習目的やニーズの調査です。

学習者本人にインタビューやアンケートで確認することが多いですが、学習者がまだ十分に日本語でコミュニケーションがとれない場合は、仲介役や通訳者を交えて聞くこともあります。

学習者のニーズは、コース開始後に変わることもあるので、状況に応じて行いましょう。

目標言語調査

「目標言語調査」は学習者が目標とする言語のネイティブに対する調査です。
ニーズ調査の一環で行うものと理解しておきましょう。

例えば、学習者が介護現場で勤務しているのであれば、目標言語調査としては、介護現場でよく使われる言葉や表現をあらかじめ調査しておくことが必要、このようなイメージです。

目標言語使用調査

「目標言語使用調査」は学習者が目標とする言語の非ネイティブに対する調査です。
こちらも、ニーズ調査の一環で行うものと理解しておきましょう。

例えば、学習者が日本語でビジネス会話ができるようになりたいというニーズを持っていた場合、目標言語使用調査では、学習者と母語が同じ(目標言語の非ネイティブ)でビジネス会話ができる人に調査をする、このようなイメージです。

レディネス調査(レディネス分析)

「レディネス調査」は学習者の準備の状況(レディネス)の調査です。

例えば、国籍、使用言語、母国での学歴、日本語学習歴、日本語の資格、などがあります。
学習歴や資格を把握しておくことで、学習者のレベルに合ったクラスに配置しやすくなります。

授業が対面ではなくオンラインの場合は、インターネットの通信環境も確認しておきましょう。

まとめ

本記事は「日本語教育におけるコース・デザイン」について解説してきました。

内容をまとめると….

  • 「コース・デザイン」:コースをデザインすること
  • 「コースの設計」「授業の設計」「評価の設計」:コース・デザインの3つの段階
  • 「ニーズ調査」:学習者の学習目的やニーズの調査
  • 「目標言語調査」:学習者が目標とする言語のネイティブに対する調査
  • 「目標言語使用調査」:学習者が目標とする言語の非ネイティブに対する調査
  • 「レディネス調査」:学習者の準備の状況の調査

こちらの記事では「日本語の授業や授業準備で役立つツール」を解説しています。

検定試験合格を独学で目指したいという方はこちらを参考にしてください。

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池田早織

運営情報
フリーランスの日本語教師兼ライター。日本語教育能力検定試験合格、日本語教師養成講座420時間修了。公的教育機関での常勤講師、技能実習生向けの日本語会話動画作成など、社会人や留学生、外国人児童・生徒への指導を含め上級者から初級者まで幅広く経験。アジア圏、欧米圏問わずこれまで約5,000人以上の指導に携わる。
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