日本語学校の設立についてスケジュール感、費用、設立後の運営、そして気をつける事を解説しています。この記事はこれから日本語学校を設立予定にしている企業経営者や設置代表者を想定読者としています。
日本語学校設立に当たって、書類作成・日本語教員採用・文科省ヒアリング対策でお困りのことがあれば、下記からご相談頂くことも可能です。
次回の申請は2025年3月となります。 一般的には申請準備に6ヶ月。短くても3ヶ月はかかると言われている業務となりますので、早めの準備を強くお勧めします。 弊社では業界特化で、日本語教師専門の人材紹介業や、開校サポート業務を行っておりますので、通常では難しい短期間での準備であっても条件によっては対応が可能なケースがございます。 初回相談は無料となっておりますので、日本語学校の開校をご検討中の方は下記から問い合せをお願い致します。 尚、2024年4月より日本語学校の認可を管轄する省庁が法務省から文部科学省に変更となり、それに伴い日本語学校の名称も“法務省告示の日本語学校(法務省告示校)”から“認定日本語教育機関”になっています。
日本語学校設立までの流れ
日本語学校設立までのスケジュールを把握する
日本語学校は年に2回開校できるタイミングがあります。4月期と10月期になります。
4月期開校の場合は1年前の4月末日までに、10月期開校の場合は10月末日までに文部科学省へ申請をする必要があります。
ただし、2024年4月からは申請締切の約2ヶ月前に開校申請を行うための事前相談予約を行う必要があるため、注意が必要です。
日本語学校設立の必要条件が揃っているか確認
日本語学校設立のために揃える必要のある要件は大きく教員、校舎、資産の3つです。
【教員】
校長 校長の勤務形態は常勤・非常勤を問わず(ただし常勤が推奨されています)、1名確保する必要があります。日本語教育機関の運営に関する知見があり、教育に関する業務に5年以上従事していた方が対象になります。過去に小学校・中学校・高校で校長を勤めていた方や、大学教授が担当するケースが多いですが、昨今ヒアリング面接が厳しくなっており、大学教授だとしても日本語教育に関する見識が足りないという理由で落とされる学校が出てきています。過去に華々しい経歴のある方を校長にしたとしても、油断せず日本語教育や日本語学校に関する知識を取り入れる姿勢が求められます。
教務主任 教務主任は常勤として1名確保する必要があります。教務主任は法務省告示の日本語学校で3年以上常勤の専任講師として勤務経験のある方である必要があります。カリキュラム(教育課程)の作成を含めて日本語学校の教務を引っ張っていくだけでなく、ヒアリング面接にも参加をする非常に重要なポジションです。一方で、教務主任は市場全体として人数が少なく、採用に苦労する方が多いのが実情です。
専任講師 専任講師は常勤として最低2名確保する必要があります(だいたいその内1名が教務主任を務めるケースが多いです)。また専任講師は下記の要件を満たしている必要があります。
- 大学(短期大学を除く。以下この号において同じ。)又は大学院において日本語教育に関する教育課程を履修して所定の単位を修得し,かつ,当該大学を卒業し又は当該大学院の課程を修了した者
- 大学又は大学院において日本語教育に関する科目の単位を26単位以上修得し,かつ,当該大学を卒業し又は当該大学院の課程を修了した者
- 公益財団法人日本国際教育支援協会が実施する日本語教育能力検定試験に合格した者
- 学士の学位を有し,かつ,日本語教育に関する研修であって適当と認められるものを420単位時間以上受講し,これを修了した者
- その他イからニまでに掲げる者と同等以上の能力があると認められる者
法務省「日本語教育機関の告示基準」より引用
非常勤講師 非常勤講師は各学校によって確保する必要のある人数が異なります。また専任講師と同様に上記の要件を満たしている必要があります。
日本語教師資格はこれから”登録日本語教員”という名称で国家資格になります。 2024年6月13日時点ではまだ誰も新しい国家資格を持った人はおらず、2024年10月申請を行う予定の方は、旧法務省告示基準の日本語教師資格を持った方を採用することになります。 国家資格を取るための第1回目の試験は2024年11月17日に実施予定となっています。
上記要件を満たす講師の採用ができない事で、申請時期を遅らせると購入した校舎を半年間寝かせることになります。
採用を自力で行うことが難しい場合は、日本語教師専門の人材紹介会社を活用するのも検討すると良いかもしれません。
【校舎】
校舎は基本的に自己所有である必要があります。またビルの区分所有も認められています。但し所有ができない特別な理由があれば賃貸でも可能で、例えば自治体所有の小学校の廃校を日本語学校として利用する場合などは過去にも認可されたケースがあります。校舎面積は最低115㎡以上の必要があり、同時に授業を行う学生1人当たりにつき2.3㎡以上である必要があります。
ただし、2022年4月1日に日本語教育機関告示基準の一部改定が実施され、10年以上教育機関を運営する法人や、専修学校又は各種学校である日本語教育機関で専修学校又は各種学校の認可基準を全て満たしている場合は賃貸物件で日本語学校を運営することが認められるように変更となりました。
【資産】
日本語学校は申請して開校するまでに1年、開校後も経営が軌道に乗るまで(黒字化するまで)約2~3年かかります。なぜなら開校直後の日本語学校は法務省から「非適正校」という扱いをされ、学生募集における競争力が弱いからです。黒字化するまでの期間、職員の人件費や学生募集の広告費、学校運営費などの様々な費用を負担する必要がある事を考えると土地建物以外で2,000~4,000万円の現金を準備しておく必要があります。
上記のように、日本語学校事業を設立から軌道に乗せるまでには想像以上に費用と時間がかかるという事をご留意頂きたいです。これから土地建物を購入して日本語学校を始めようと考えている方は、0から設立する以外にもM&Aで既存の日本語学校を買収するという手段もあります。その場合には弊社でも日本語学校の売却情報を持っておりますのでお問い合わせください。
必要書類の作成や収集(申請から2ヶ月前~半年)
日本語学校設立のための要件を揃えたら、文部科学省へ申請するための書類作成を行います。提出する書類は大きく分けて2グループに分かれます。1つは「提出資料」と呼ばれる計29種類の書類です。文部科学省から定められたフォーマットがありますのでそれに沿って書類を作成することになります。(下記は旧法務省認可時代の提出資料のチェックリストですが、ほぼ類似しているため参考で載せています。)
もう1つが「添付書類」と呼ばれる合計33種類の書類です。「添付書類」は教員の最終学歴証明書・在籍証明書・資格証明書など外部から収集する必要のある書類が多く、手間がかかります。早めに取り組み始めた方がよいでしょう。(下記も同様に旧法務省認可時代の立証資料のチェックリストですが、ほぼ類似しているため参考で載せています。)
上記「提出資料」と「添付書類」の作成は余裕を持って6ヶ月ほど前から開始すると安心ですが、最短でも3ヶ月はかかります。(もっとギリギリで2ヶ月前に作成開始して間に合ったケースも聞いたことがありますが、かなり慌てての提出でした。)
また各書類の作成方法に関しての疑問は、旧法務省時代は出入国在留管理庁へ電話をすると回答して頂けたのですが、2024年4月以降は電話での問い合わせ窓口が無くなり、文部科学省のHPからのみテキストで問い合わせできる形式となりました。基本的に書類作成は日本語学校の設立未経験者が0から行うと非常に時間がかかるため日本語学校の設立経験のある行政書士へ依頼されることをオススメします。
(万一書類に不備があり申請が認められないと次回申請は6ヶ月先になり、その間主任教員の人件費や取得した土地建物を寝かせる機会損失が生まれるため、大きな費用がかかってしまいます。)
事前相談の予約(申請2ヶ月前)
4月申請の場合は2月上旬頃、10月申請の場合は8月上旬頃に文部科学省のHPから事前相談の予約を行います。
この事前相談予約を逃してしまうと申請ができないため注意が必要です。
2025年4月申請の事前相談予約は令和7年3月3日(月曜日)から3月7日(金曜日)の間のみ受付を行う予定となっています。
事前相談(申請1ヶ月前)
事前相談を行います。原則として申請に必要な書類をすべて揃え、事前相談日の 10 日前までに文部科学省のHP上の電子システムを通じて日本語教育課(仮称)へ提出した上で、オンラインで実施することになっています。
事前相談の出席者は、審査に向けた準備が整っていることを確認する観点から、設置代表者(申請する法人の代表者)、校長、主任教員等の日本語教育機関の職員が対応することが推奨されています。
文部科学省への申請(開校1年前まで)
「提出資料」と「添付書類」を揃えて、文部科学省のHPから申請します。
実地調査(申請から1ヶ月後)
申請が済むと、出入国在留管理庁の審査官による実地調査(校舎の審査など)が行われます。その際には、事前提出していた校舎図面と実際の間取りに相違がないかの確認が行われます。
またその後、法務省と文部科学省が実地調査の報告に基づき、申請書類の審査を行います。
文部科学省によるヒアリング(申請から2~4ヶ月後)
そして文部科学省によるヒアリング面接があります。
日本語学校設立の難易度は年々上がってきており、設立申請を行う約半数の学校は不許可になると言われておりますが、その最たる理由がこの面接になります。
ヒアリング面接は合計約2時間で「日本語学校設立の趣旨・理念・目標」「日本語教育カリキュラムの実現可能性や、設置理念との整合性」が問われます。
面接官は3名で、1名が「文部科学省の担当者」、1名が「大学教授」、もう1名は「開校済の日本語学校の設置代表者、校長、教務主任等」が担当するケースが多いようです。
日本語学校サイドからは3名で「設置代表者か経営担当役員」「校長」「教務主任」が出席します。ヒアリング面接に合格するためには、この出席する3名間で発言内容に相違の無い様、リハーサルをしっかりと行う必要があります。
この文科省とのヒアリング面接は上述の通り、日本語学校の開校申請を通す上で最たるハードルになります。
弊社では文科省ヒアリング対策経験も数多くありますので、お困りの方はお問い合わせ下さい。
管轄する省庁が変更となって2024年7~8月が初めての文部科学省ヒアリング面接となります。 本章”文部科学省によるヒアリング”以降に記載の内容は旧告示基準の際の内容を基に作成していますのでご留意ください。
結果通知(申請から7~8ヶ月後)
今までの審査を基に開校認可に関する発表が行われます。この際、万が一不交付だった場合は通常約2週間ほどの是正期間が与えられますが、その間に指摘された問題点を改善できなければ、次回再申請を行うことになります。
例えば、不交付理由が教務主任だった場合は、2週間以内に代わりの教務主任を探さなければ6ヶ月開校が遅れる事になります。これは非常にハードルが高くほとんどの場合2週間で教務主任を揃えるのは不可能ですが、弊社では約14,000名(2024年11月現在)の日本語教師登録があり、緊急での日本語教師採用も対応可能なケースがありますのでお困りの際は1度お声がけいただければと思います。
学生受入の準備と告示の申請(申請から8ヶ月後)
日本語学校に受け入れる学生の在留資格認定証明書(留学ビザ)の交付申請を、各地方の出入国在留管理庁で行います。同時に、法務大臣の告示申請も行います。
尚、ビザ申請に当たっては生徒1人1人の各書類収集、翻訳、作成を行う必要があり、用意する必要のある書類としては下記が代表例(国によって提出書類が異なります。)になります。
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 入学願書
- 履歴書
- 経費支弁書
- 現地教育機関の卒業証明書
- 現地教育機関の成績表
在留資格の許可(申請から10ヶ月後)
申請していた学生の留学ビザ交付結果が発表されます。発表時期はどの日本語学校も同じで4月生徒の場合は2月末ごろ、10月生の場合は8月末ごろになります。
入学希望者の受入れ(申請から11ヶ月後)
留学生が来日。学校の説明や入学試験、手続きなどを行います。
開校(申請から1年後)
無事開校となります。
日本語学校設立の失敗例と対策
日本語学校の設立申請時の定員はできるだけ100名で申請する
日本語学校設立時の定員はできるかぎり最大値である100名で申請をした方がよいです。
これは日本語学校を経営する際の売上を考えると至極当然ではあるのですが、設立される経営者の中には申請時に日本語教師を確保できないため定員を減らして申請しために、黒字化に苦労したという話もお伺いしました。事前に少し準備をして数名人員確保をするだけで、年間数千万円の売上変動がでるためこの点は大切だと思われます。
ただし、定員を80名で申請するのと、100名で申請する場合では、開校申請時に確保する必要のある教員数が2~3名程度異なるため、開校申請難易度を下げるためにも定員80名でまずは申請することも良い戦略です。
交付率の高い国からの募集ルートが確保できるか
日本語学校を経営する上で、交付率の高い国からの学生募集をうまくできるかが最大のポイントだと思われます。交付率というのは募集したい学生の出入国在留管理庁への「ビザ申請数」が分母で「ビザ取得数」が分子になります。
申請した学生のビザが出るか出ないかは、作成した書類の不備の有無や、学生の経費支弁者に資産がしっかりあるか等ポイントはありますが、なにより申請する学生の出身国によって、交付率は大きく異なっています。
例えば中国・韓国・アメリカ・ヨーロッパ等の学生はどこも95%以上、ないしは100%の学生にビザがおりています。逆に東南アジアで言うとベトナムの学生は60~80%、南アジアのネパール・スリランカの学生は20%も交付されないなんていうケースも多くあります。(交付率はその日本語学校がある管轄の出入国在留管理庁によって異なります。例えば東京入管では20%しか交付されない国でも、名古屋入管だと60%交付されるというケースもあります。)
ですので、例えば同じ定員100名の日本語学校でも交付率の高い中国の募集ルートに強いコネクションがある学校は開校直後からほとんど定員一杯まで学生を受け入れることが出来る一方、交付率の低いネパールの学生しか募集ができない学校は仮に120名(日本語学校は定員の1.2倍まで学生募集の申請を出すことができるルールがあります。)申請を出したとしても20~25名程度しか受け入れができないことになります。これは売上にすると年間5千万~6千万円ほど異なるという計算になります。
多くの学校はその国現地にある留学エージェントと提携をして、学生募集をしています。いかに交付率の高い国で信頼のおける留学エージェントと提携できるかが、日本語学校経営を軌道に乗せる鍵と言えるでしょう。
よく聞かれる質問
日本語学校の設立を検討されている経営者様や、経営担当役員様からよく聞かれる質問をまとめています。参考にして頂ければ幸いです。
日本語学校の設立に補助金は出る?
日本語学校の設立のために用意された補助金は基本的にありません。
ただし、各都道府県や自治体が地域の日本語教育や多文化共生社会を促進するために、独自で補助金を設けるケースは見受けられます。
例えば令和4年度においては東京都が、外国籍社員を雇用する企業の日本語研修やビジネスマナー研修に対して、補助金を支給しています。日本語学校の設立申請をして認可が降りるまでの1年間は、留学生の受け入れが出来ず売上が立たないにも関わらず、教員の雇用義務は生じており経費が発生するため、こうした補助金を営業材料として法人向け日本語研修事業を行うことは1つの手と言えるかもしれません。
また他にも宮城県が日本語学校設立に動いているという例もあります。今後も日本国内、特に地方の人口減少が加速することは自明で、各都道府県や自治体が税金を活用して地域の外国人受け入れ体制を整えていく流れは進むかと思います。
日本語学校設立を検討される際には、その地域の都道府県や自治体のHPを確認して活用できる補助金がないか確認してみると良いでしょう。
設立支援実績
弊社で設立支援に携わらせて頂きました日本語学校一覧となります。(人材紹介による教員採用支援含む)
- T&Y日本語学校(大阪府)
- 理知の杜日本語学校函館校(北海道)
- 関東日本語アカデミー(埼玉県)
- チアライズ日本語アカデミー(茨城県)
- 智見未来学院(大阪府)
- VEGA日本語学校(愛知県)
- 京都ランゲージアカデミー(京都府)※2025年4月に認定日本語教育機関として開校予定
日本語学校設立までの流れ まとめ
①日本語学校設立までのスケジュールを把握する
②日本語学校設立の必要条件(教員、校舎、資産)が揃っているか確認
③必要書類の作成や収集(申請から2ヶ月前~半年)
④出入国在留管理庁への申請(開校1年前まで)
⑤実地調査(申請から1ヶ月後)
⑥文部科学省によるヒアリング(申請から2~4ヶ月後)
⑦告示発表(申請から7~8ヶ月後)
⑧学生受入の準備と告示の申請(申請から8ヶ月後)
⑨在留資格の許可(申請から10ヶ月後)
⑩入学希望者の受入れ(申請から11ヶ月後)
⑪開校(申請から1年後)
日本語学校設立には想像以上に時間も気力も労力もかかりますが、無事設立できたときの喜びは非常に大きいです。
日本語学校設立に関する簡単なご相談があれば、無料でご回答させていただきますのでお気軽にお問い合わせください。
//日本語学校設立や講師採用について//
日本語教師キャリア マガジン編集部
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