日本語能力試験(JLPT)N3の難易度は?N2・N4とのレベル差についても解説◎

日本語能力試験N3

外国人雇用が担当の人事担当者、経営者の方!

こんなお悩みはありませんか?

  • 日本語能力試験って、どんな試験なの?
  • N3の難易度はどれくらい?
  • N3を持つ人は、どれくらいの日本語力が期待できる?
  • N3があると、ビジネスの場面でどれくらい役立つ?
  • N3はN2・N4レベルとどれくらい違う?

今回は、外国人雇用者のこんなお悩みを解決するための記事となっております!

さらに、「N3合格を目指す学習者のために、試験内容について詳しくしりたい」という新人日本語教師にも参考にしていただける情報となっています◎

日本語能力試験の試験そのものについて、さらにN3の試験内容や合格率、N3レベルに期待できる日本語レベルについて、現役日本語教師がわかりやすく解説します!

また、これから日本語教師になる事に興味のある方はこの記事も参考にしてみてください◎

日本語教師になるには?

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2022/4/8

日本語能力試験(JLPT)とは?

日本語能力試験は、日本語を母語としない人(日本国籍でも受験可能)を対象にした、日本語能力を認定する語学検定試験です。

試験概要はこちらです!

  • 公益財団法人日本国際教育支援協会&独立行政法人国際交流基金が主催
  • 1984年から実施されている
  • 国内だけではなく世界87カ国・地域で受験可能(2019年時点)
  • 基本は7月と12月の年に2回実施
  • レベル:「N1〜N5」の5つ(N1が最上級)
  • 試験構成:①言語知識(文字・語彙・文法)②読解 ③聴解の3パート
  • 英語名称:”Japanese-Language Proficiency Test”
  • 日本語教育業界では「JLPT」「日能試」などと呼ばれたりもしている

「日本語能力試験」と「日本語検定」とはどう違うの?と思う方もいるかもしれませんが、違いはこちらです!

【日本語能力試験と日本語検定の違い】

  • 日本語能力試験→日本語ネイティヴでない人が日本語能力を測る試験
  • 日本語検定→日本人が日本語の知識と運用能力を測定するための検定

外国人が日本語能力試験を受験する理由&メリット

外国人が日本語能力試験を受験する目的は、「留学時、大学院・大学入学のため」「就職、昇給・昇格のため」が、半数以上を占めています。

具体的には、このような目的・メリットのもとで受験されることが多いです◎

  • 日本の大学へ入学するための条件を満たすため
  • 就職する際に求人要件を満たすため、語学力をアピールするため
  • 社内での昇給・昇格条件を満たすため
  • 「高度外国人材」のビザ優遇措置を受けるためのポイント取得(N1、N2のみ)
  • 日本の国家試験を受験するための条件のひとつ(N1)
  • 日本にほんの中学校卒業程度認定試験一部の試験科目の免除(N1、N2)
  • EPA(経済連携協定)の看護師・介護福祉士候補者選定の条件のひとつ(N5~N3)

受験理由のデータ

日本語能力試験公式サイトより引用

日本語能力試験の受験者数

日本語能力試験の受験者数は、年々伸び続けています。

理由は、日本語学習者数が年々増加しているためです。

日本語能力試験公式HPより参照

最新データによると、受験者数は年間約100万人を超えています。(2018年7月と12月実施試験)

そのうち約63%は日本国内の受験者、約37%が海外の受験者でした。

また、例年のレベル別受験者数は、多い順から「N2→N3→N1→N4→N5」となっています。

N3は、N2に次いで2番目に受験者数が多い級となっています◎

韓国や中国などの東アジアでは、N1やN2など高い級の受験者数が多い傾向にあります。

反対に、タイやベトナムなどの東南アジアでは、N3、N4の受験者数の方が多いです。

日本語能力試験N3の試験概要

日本語能力試験N3の試験概要はこちらです。

N3 試験概要
言語知識(文字・語彙) 30分
言語知識(文法)・読解 70分
聴解 40分
合計140分

大きく3つのパートに分かれており、全問マークシート形式です。

N1〜N5すべてに共通していますが、書く能力を問うような作文・小論文を書くパートや、会話力を測るパートはありません。

「話す・聞く・書く・読む」の4技能のうち、「聞く」と「読む」のみを測る試験となっています。

日本語能力試験N3の難易度

N3に合格すると、「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる」レベルであると認定することができます。

レベル 認定の目安
N1 幅広い場面で使われる日本語を理解することができる
読む
  • 幅広い話題について書かれた新聞の論説、評論など、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章などを読んで、文章の構成や内容を理解することができる。
  • さまざまな話題の内容に深みのある読み物を読んで、話の流れや詳細な表現意図を理解することができる。
聞く
  • 幅広い場面において自然なスピードの、まとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる。
N2 日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる
読む
  • 幅広い話題について書かれた新聞や雑誌の記事・解説、平易な評論など、論旨が明快な文章を読んで文章の内容を理解することができる。
  • 一般的な話題に関する読み物を読んで、話の流れや表現意図を理解することができる。
聞く
  • 日常的な場面に加えて幅広い場面で、自然に近いスピードの、まとまりのある会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係を理解したり、要旨を把握したりすることができる。
N3 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
読む
  • 日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を、読んで理解することができる。
  • 新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができる。
  • 日常的な場面で目にする難易度がやや高い文章は、言い換え表現が与えられれば、要旨を理解することができる。
聞く
  • 日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる。
N4 基本的な日本語を理解することができる
読む
  • 基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる。
聞く
  • 日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。
N5 基本的な日本語をある程度理解することができる
読む
  • ひらがなやカタカナ、日常生活で用いられる基本的な漢字で書かれた定型的な語句や文、文章を読んで理解することができる。
聞く
  • 教室や、身の回りなど、日常生活の中でもよく出会う場面で、ゆっくり話される短い会話であれば、必要な情報を聞き取ることができる。

日本語能力試験公式HPより参照

N4〜N5が「基本的な日本語を理解できるレベル」、N1〜N2が「日常会話より高いレベルの日本語を理解できるレベル」と設定されています。

その中間のN3は、「日常会話レベルの日本語」だとイメージしておくと良いでしょう◎

〈合格点・合格率〉

N3は180点満点で、合格点は95点です。

全パート合計で95点以上あれば良いというわけではなく、各パートにおいて基準点(19点)以上とれていることも必要です。

レベル 得点区分 得点の範囲
N3 言語知識(文字・語彙・文法) 0~60
読解 0~60
聴解 0~60
総合得点 0~180

合格率は、毎年だいたい33〜54%です。

実施年により、合格率には幅がありますね◎

日本語能力試験N3の問題例

実際にどんな問題が出るのでしょうか?

各パートごとの問題例はこちらです。

〈言語知識(文字・語彙)〉

    のことばの読み方として最もよいものを、1・2・3・4から一つえらびなさい。

  • 3日前から雨が続いている。

1 ういて  2 うごいて  3 ついて  4 つづいて

つぎのことばの使い方として最もよいものを、一つえらびなさい。

  • 今ごろ

1 それは、今ごろテストを始めます。

2 今ごろ東京では桜が咲いているでしょう。

3 今ごろ現金で支払うことが少なくなった。

今ごろ雨が降りそうな天気だ。

〈言語知識(文法)〉

つぎの文の(   )に入れるのに最もよいものを、1・2・3・4から一つえらびなさい。

  • 父が短期なの(   )、母の方は気が長い。

1 において  2 に対して  3 について  4 によって

つぎの文の ★ に入る最もよいものを、1・2・3・4から一つえらびなさい。

  • 先週          ★      から、行ってみませんか。

1 ばかりの

2 レストランが

3 オープンした

4  ある

もっと詳しく見たい方は、公式HPに各級の問題例が公開されています◎

N2・N4とのレベル差は?

N3レベルに近いN2・N4レベル差については、以下のようなイメージで捉えておくのが良いでしょう。

N2,N3,N4のレベルイメージ

  • N2:日常レベル以上。やや複雑な新聞、ニュース、会話も理解できる。
  • N3:日常レベル。日常的な話題に関する新聞、ニュース、会話なら理解できる。
  • N4:簡単な日常会話や新聞、身近な話題についてゆっくり話されたニュースは理解できる。

実際に各級の問題例を並べてみて、難易度の違いを見てみましょう!

N2の問題例

  • 戦後、日本は貧しい時代を経験した。

1 まずしい  2 きびしい  3 けわしい  4 はげしい

  • 新しい商品を売るために、彼は毎日忙しく飛び(   )ている。

1 かけて   2 かかって  3 まわして  4 まわって

N3の問題例

  • (   )寝たので、気持ちがいい。

1 すっきり  2 ぐっすり  3 しっかり  4 ぴったり

  • 次々に、新しいゲームが作られる。

1 だんだん  2 これから  3 いつでも  4 つぎつぎ

N4の問題例

  • あには バスで 会社に 通って います。

1 むかって  2 かよって  3 わたって  4 もどって

  • スーパーで もらって (   )を 見ると、 何を 買ったか わかります。

1 レシート   2 レジ   3 おつり   4 さいふ

日本語能力試験N3取得者の実際の日本語レベル|ギャップはある?

「N3は日常会話レベルに認定される」とお話ししましたが、実際の日本語レベルはどうなのでしょうか?

実は、日本語能力試験だけで実際の日本語能力を判断するのは難しいところがあります。

「試験結果と実際の日本語レベルにギャップが生じるのはナゼなのか?」という理由を3つお話しします!

外国人雇用者が採用する際、または日本語教師が学習者のレベルを把握する際には、ぜひこのポイントに気をつけてくださいね◎

① N3レベル(日常会話レベル)の話す力・書く力がないことも

N3に合格しているからといって、日常会話レベルの会話や書く能力がともなっている訳ではありません。

理由は日本語能力試験は、語彙・文法の知識、読む力、聞く力を試す試験であり、話す力・書く力が測定できるものではないからです。

たとえば、「日本人がTOEICの試験である程度の点数が取れたとしても、スピーキングとライティングの能力が同等にあるのか?」というお話と同じですね。

N3レベルの語彙は読めるし文法も理解できるけど、実際に話せる、文章で書けるかは別です!

結論、試験だけでは判断できない話す力・書く力は、面接での会話を通してなど直接本人と話すことで確認することが必要です◎

② 日本語能力試験は中国語圏の学習者に有利

この試験は、中国語圏の学習者にとってかなり有利な試験となっています。

理由は、中国語と日本語の漢字は表記も意味も似ている(あるいは同じ)ものが非常に多いからです。

  • 中国語と日本語で、意味も表記も同じ単語

大学,学生,世界,学校など

  • 中国語と日本語で、表記が似ている単語

化粧品=化妆品,口紅=口红,解決する=解决

「中国語は一切わからないけど、同じ意味や似ている表記はなんとなく意味がわかるかも」と感じた方もいるのではないでしょうか?

このように、日本語と中国語は非常に似た言語なので、その他の言語の母語話者と比較すると、言語知識・読解パートは点数が取りやすい傾向にあります。

私の知り合いで、「中国人にとって、N1でも点数が取りやすいと思う。中国人だけ違う試験内容にしないと平等じゃないよ。」と言っていた中国人がいました…!

「漢字を見たら意味はわかるけど発音できない、という場合でも点数が取れてしまう」

中国語圏の学習者にはこんなメリットがある、ということも注意しておきましょう◎

③ ビジネス日本語・日本文化への理解度は測れない

日本能力試験では、ビジネス日本語力、日本文化への理解度は測れません。

N3は日常会話レベルのため「です・ます調」で話すことができますが、上司に対して敬語が使えるレベルではありません。

さらに、「日本文化への理解度」も外国人雇用者は気になるポイントかもしれませんが、これにも日本語の能力とは別に個人差がありますね◎

「日本の企業文化についてどれくらいの理解度があるのか?馴染めるのか?」「会話レベルがどれくらいあるのか?」などは、面接で確認しておきたいポイントです!

日本語能力試験N3の日本語レベル まとめ

  • JLPTは留学、就職、昇給・昇格、ビザ取得等の目的で受験されている
  • N1〜N5レベルがある(N1は最難関)
  • N3は「日常会話レベル」
  • N3の合格点は95点、合格率は33~54%
  • JLPTは語彙・文法の知識、読解力、聴解力を測る試験
  • 話す・書く能力は測られていないため、面接で確認することが大切!
  • ビジネス日本語力も測られていないため、アルバイト経験を参考にすると良い◎
  • 漢字を使う中国語圏の学習者は、点数が取りやすい傾向がある
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伊藤えり子

運営情報
関東在住の現役日本語教師。日本語教育能力検定試験、日本語教師養成講座を保持。実際の指導はもちろんのことオンライン事業立ち上げや教材の開発、また一般企業で経験を活かした独自の視点で情報を発信中。日本語教師キャリア マガジンのライター
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