グローバル化や国内における外国人労働者が増えているといった背景から、外国人社員を受け入れている企業は数多くあります。
そんな中、「外国人スタッフへの日本語研修を導入したいけれど、まず何から始めていいか分からない」「日本語研修をする前に準備すべきことや、委託先の選び方は?」といったお悩みを持つ経営者や現場担当者の方もいるでしょう。
そこでこちらの記事では、外国人社員に向けた日本語研修を行う際の完全ロードマップについて解説。
研修前に検討すべきポイントから研修中のフォローアップの仕方、研修後に至るまで、事前に知っておきたい情報をすべてまとめました。
目次
外国人労働者向け日本語教育の現状
現在、以下のような外国人労働者の方が日本の企業で働いています。
- 企業から「就労ビザ」サポートをもらって働く外国人
- 専門的な技術力や知識を有する「高度専門職ビザ」を取得した高度外国人人材
- 実習実施者と雇用関係を結び、技能修得を図る「技能実習生」
- ある分野において一定の技能を持つ人が働ける「特定技能」
日本では少子化の問題から、人材不足を補う目的として積極的に外国人人材を受け入れている状況です。
そんな中、外国人スタッフを抱える企業向けに「日本語研修サービス」を実施している教育機関や会社が数多くあります。
企業向けの日本語研修サービスを提供しているのは、主に以下のような機関/会社になります。
- もともとは留学生を受け入れる日本語学校を運営している教育機関
- 外国人社員向けの日本語研修に特化した会社
- 生活者やビジネスパーソンなど幅広い学習者に日本語レッスンを提供している会社
など
日本語研修に特化した会社から、長年日本語学校を運営してきた教育機関が企業向け研修のコースを設置している場合など、さまざまです。
企業内外国人社員向けの日本語研修【準備編】
まずは、日本語研修を依頼する前に社内でどのような準備をしておくべきなのかを見てみましょう。
外国人社員の日本語教育担当者を決める
まずは、日本語研修を担当する人を社内で決めましょう。
ただ外国人スタッフに研修を受けさせるのではなく、「外国人スタッフの日本語力向上をもって、会社のより良い戦力となれるように」という目標のために、リーダーシップを取り責任を持って研修のフォローができる担当者を決めることは非常に大切です。
一般的には、人事や総務部の社員、外国語が堪能であったり海外経験のある社員が担当することが多いです。
外国人社員の到達目標を決める
続いて、外国人社員の日本語力を最終的にどこまで上げるべきかを検討しましょう。
現場をよく知らない人事や総務部の人だけが単独で決めてしまうのはリスクがあるため、現場責任者や外国人社員など現場の仕事をよく理解している人も含めて、必要な日本語レベルを明確にするようにしましょう。
日本語研修の予算を立てる
日本語研修にどれくらいの予算が充てられるのかも検討しておきましょう。
さらに、都道府県によっては外国人社員向けの日本語研修に「助成金」が出る場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
たとえば、東京都では中小企業における外国人従業員の研修費用に対して、「経費の2分の1(最大25万円)」を支援助成するという制度があります。
※ 東京都「中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金」について
外国人社員と面談し時間帯を検討
研修前には、外国人社員一人ひとりと面談する機会も忘れずに設けるようにしましょう。
まず、なぜ日本語研修を実施するのかといった動機・目的を説明したり、現場責任者も交えて研修に参加できる時間帯や期間なども明確にしておくようにしましょう。
企業内外国人社員向けの日本語研修【委託先の選定】
事前準備が済んだら、日本語研修を依頼する委託先を決めていきましょう。
委託先は2〜3社に絞る ※オンライン日本語研修がおすすめ
冒頭で説明した通り、日本語研修を実施している機関や会社は数多くあります。
まずは、実際に見積もり依頼と相談をする委託先を2〜3社に絞ってみましょう。
- 対象者や対象のレベルが適しているか
- 受講形態が適しているか(講師派遣/通学/オンライン)
- 受講のしやすさはどうか(レッスンの時間帯など)
- 予算内で受講ができそうか
おもに上記のような項目を確認し、希望と合いそうな会社を選定してみましょう。
おすすめなのは、場所や時間の制約が少ない「オンライン日本語研修」です。
コースデザインの相談&見積もり依頼
ある程度選定が進んだら、実際にコースデザインの相談や見積もりを依頼してみましょう。
「仕事内容や日本語レベルの現状、目標の日本語レベル、受講可能なスケジュール、予算」等、先方に共有します。
日本語研修サービスの担当者は、それに応じて適切なコースデザインを提示し、見積もりを出してくれるでしょう。
実績・適性を見て1社に絞る
各会社で提案されたコース内容や見積もりをもとに、実際に研修を依頼する会社を1社に絞りましょう。
ここでは、私たち依頼する側と研修委託先の適性のほかに、「外国人人材の日本語研修の実績が豊富かどうか」などもチェックしてみましょう。
過去に同じような業界や業種の研修実績が豊富にある会社だと、適性もあり尚かつ信頼できると判断できるでしょう。
企業内外国人社員向けの日本語研修【研修実施前の準備】
実際に契約ができたら、スムーズかつ効果的に研修に取り組めるように事前の準備が必要です。
レベルチェックにより現状を把握
ほとんどの場合では、研修依頼先によるレベルチェックが行われます。
現状の日本語レベルを把握し、目標到達までにどれくらいの研修が必要なのかを判断するためです。
これはコースデザインを最終的に決める段階で実施される場合もあります。
レベルチェックの結果は、企業内の研修担当者もしっかりと把握しておくようにしましょう。
学習環境を整えておく
企業内で日本語研修を実施する場合は、きちんと学習環境を整えておくようにしましょう。
ホワイトボードやプロジェクターなど必要な備品を揃えたり、研修用に利用する会議室を確保しておくようにしましょう。
外国人社員との面談
最後に、外国人社員との面談をおこないます。
日本語研修で望むような効果が現れるかどうかは、やはり外国人スタッフ自身の取り組み方・モチベーションによって大きく左右されます。
研修が始まる前に再度、研修を行う目的や最終的な目標をきちんと共有し、研修に対して不明な点などがないか等、聞き取りをするようにしましょう。
企業内外国人社員向けの日本語研修【研修実施中のフォローアップ】
つづいては、研修実施中のフォローアップについて。
委託先と定期的に情報共有をおこなう
研修中は委託先にすべて任せたままにせず、定期的に担当の日本語教師と情報共有をおこなうようにしましょう。
外国人社員の出席状況や参加態度、日本語の上達度などについて共有してもらい、順調に研修が進んでいるのかを把握しておきましょう。
外国人社員と密にコミュニケーションを取る
外国人社員とのコミュニケーションも忘れないようにしましょう。
中には、研修のレベルや進め方に疑問を持っていたり、一時的に業務との両立が難しくなってしまうなど、悩みを抱える社員が出てくる可能性もあります。
面談をしたり業務の中で研修に関する話題を出したりなど、フォローアップを怠らないようにしましょう。
必要があればコースの見直しをする
異動や業務内容が大きく変わったり、日本語レベルの上達具合などによって、コースの見直しが必要になる場合もあります。
その場合は、担当の日本語教師や外国人社員と話し合ったうえで、コースデザインの軌道修正をおこないましょう。
企業内外国人社員向けの日本語研修【研修実施後】
最後に、研修終了後のフォローアップについて解説します。
レベルチェックで成果を確認
研修実施後は、まずレベルチェックをして目標としていたレベルに到達できたのかを確認しましょう。
達成できるのがベストですが、場合によっては成果が思うように出ないことも。
その際は研修委託先と話し合い、コースデザイン変更の必要があるかやそのまま研修を継続するべきかなどを決めましょう。
外国人社員へのフィードバック
外国人社員と面談を実施し、フィードバックを行いましょう。
日本語レベルの上達度を再度確認し、具体的にどのように業務に生かしていくのかなど、成果をもとに組織にどのように貢献できるのかといった次なる目標を立てるのも良いでしょう。
また語学は一時的な努力だけではなく、その後にいかに学習を続けられるかもとても重要なポイントとなります。
委託先との面談
最後に委託先との面談をし、日本語研修のフィードバックをしましょう。
日本語研修を実施している機関の中では、「日本人社員が外国人スタッフへどのように接するべきか」「外国人社員への理解の深め方」などの研修・講義をおこなっているところもあります。
日本語力以外にも相談したいことがあれば、これを機にアドバイスをもらうのも良いでしょう。
企業内外国人社員向けの日本語研修【費用の目安】
こちらでは、法人向け日本語研修の費用相場についてお話しします。
研修の予算を組むために事前に費用の目安が知りたい、という方はたくさんいるでしょう。
研修期間や授業内容、マンツーマンorクラスレッスンなど研修内容によって変わってくるため、一概に言うことはできませんが、まずは日本語講師1人あたりの費用相場をみてみましょう。
日本語講師にかかる費用(1時間あたり)は、2,000〜3,500円が相場となります。
さらに、研修をおこなうにあたっては講師の人件費だけではなく、「コースデザイン費」、教材費やフィードバック作成など研修実施前後にかかる諸費用を含めた「研修管理費」も必要となります。
「講師の人件費」「コースデザイン費」「研修管理費」をすべて含めると、研修費用は4,000〜8,000円(1時間あたり)としている機関がほとんど。
もちろん1回きりではなくある程度研修を継続していかないと結果につながらないため、15コマ(1コマ1時間)の研修にすると6〜12万円、30コマだと12〜24万円になります。
これは社員一人あたりの費用で算出しているため、複数の外国人スタッフ向けに研修を実施するとなるとさらに費用はかかります。
どうしても予算が足りないという場合は、マンツーマンではなくグループ型レッスンを選択すると研修費用が抑えられるでしょう。
外国人社員への日本語教育/日本語指導を成功させるコツ
最後に、外国人社員への日本語教育を成功させるための3つのコツをお伝えします。
せっかく予算を出して研修を実施したのに効果が見られなかった…なんてことにならないように、ぜひ以下3つのポイントを意識して日本語研修に臨んでみましょう!
- 適性・実績のある日本語研修サービスに委託する。
- 研修中は担当日本語教師・外国人社員との情報共有を欠かさない。
- 研修後、実際に業務に活かせるかどうかまでフォローする。
企業内外国人社員向けの日本語研修【まとめ】
いかがでしたか?
こちらの記事を通して、外国人社員向けに日本語研修を実施する際のポイントや大まかな流れが理解できたかと思います。
研修全般について相談したい、どんな研修をおこなっているのか知りたいという方は、ぜひホームページの詳細をチェックしてみてくださいね。
伊藤えり子
運営情報最新記事 by 伊藤えり子 (全て見る)
- 日本語教師の国家資格化 日本語教育機関認定法が成立 - 2023/5/27
- ルネサンス日本語学院の日本語教師養成講座を紹介!特長や費用は? - 2023/5/25
- 日本語教師は就職・転職先をどう選ぶ?転職する理由は?313人へ調査してみた! - 2023/5/10