日本語能力試験(JLPT)N1の難易度は?採用での注意点も解説◎

今回の記事は下記のような方を対象とした内容です。

こんなお悩みを持つ”外国人を雇用する企業の経営者・人事担当者”の方、

「日本語能力試験N1だと、実際の業務で問題なく仕事ができるレベルなのかな?」

「実際にビジネスの場面でどれくらい活かせるのか知りたいなぁ。」

こんなことが知りたい新人日本語教師”の方、

「N1合格を目指す日本語指導のために、日本語能力試験N1について詳しく知りたい!」

日本語能力試験N1の詳しい試験概要や難易度・合格率、N1取得者の実際の日本語レベルについて、現役日本語教師がわかりやすく解説します!

外国人を採用をする際N1を目指す学習者を指導する際非常に役に立つ記事となっています。

また、これから日本語教師になる事に興味のある方はこの記事も参考にしてみてください◎

日本語教師になるには?

2024年最新版|日本語教師になるには?国家資格化・仕事内容・給料について徹底解説!

2022/4/8

日本語能力試験(JLPT)とは?

N1レベルを解説するまえに、日本語能力試験そのものについて概要を説明します。

日本語能力試験は、公益財団法人日本国際教育支援協会独立行政法人国際交流基金が主催している試験です。

日本語を母語としない人(日本国籍でもOK)を対象にした、日本語能力を認定する語学検定試験です。

英語名称の”Japanese-Language Proficiency Test”を略して「JLPT」、または「日能試」と呼ばれたりもしています。

1984年から実施されていて、国内だけではなく世界87カ国・地域で受験することができます。(2019年時点)

N1(最上級)からN5まで5つのレベルがあり、7月と12月の年に2回実施されています。

ちなみに、「日本語検定とはちがうの?」と思う人もいるかもしれません。

簡単な違いはこちらです↓

【日本語能力試験と日本語検定の違い】

  • 日本語能力試験 → 日本語ネイティヴでない人が日本語能力を測る試験
  • 日本語検定   → 日本人が日本語の知識と運用能力を測定するための検定

外国人が日本語能力試験を受験する理由・メリット

外国人はどのような目的で日本語能力試験を受けているのでしょうか?

日本語能力試験は、留学、就職、昇給・昇格、ビザ取得など、さまざまな目的で受験されています。

たとえば、このような理由で受験している人たちがいます。

  • 日本の大学へ留学するための条件を満たすため
  • 就職する際に求人要件を満たすため、語学力をアピールするため
  • 「高度外国人材」としてビザ優遇措置を受けるためのポイント取得
  • 海外で取得した資格を日本でも認めてもらうため(医師免許など)
  • 社内での昇給・昇格条件を満たすため

ビザの優遇措置を受けられたり、昇給・昇格につながるなど、多くのメリットがあるのですね!

日本語能力試験の公式サイトによると、受験者の半数以上が「大学院・大学の入学に必要」「教育機関への能力証明に必要」「就職、昇給・昇格のため」との理由で受験しているそうです。

受験理由のデータ

日本語能力試験公式サイトより引用

日本語能力試験の受験者数

受験者数の傾向

日本語学習者が年々増加していることから、日本語能力試験の受験者数も以下のように伸び続けています。

日本語能力試験公式HPより参照

2021年6月時点の最新データによると、2018年(7月/12月)の受験者数は合計約100万人(1,009,074人)

そのうち日本国内の受験者は約63%海外での受験者数は約37%を占めていました。

ちなみにN1の受験者の全体に占める割合は、約10%(105,033人)でした。

地域別の受験者数

海外の受験者数のうち、地域別に見ると、中国・韓国などの東アジア地域で受験者数がもっとも多く、つづいて2番目にインドネシア・タイなどの東南アジア地域が多くなっています。

日本語能力試験N1の試験概要

ここからは、日本語能力試験N1に絞ってお話をしていきます。

日本語能力試験N1の試験概要はこちらです。

言語知識(文字・語彙・文法)・読解 110分
聴解  60分

※ 全問マークシート形式

日本語能力試験は日本語の知識、読む力、聞く力を測るもので、話す・書く能力を直接測るパートはありません。

その他N2~N5はこちらを参考にみてください。

日本語能力試験公式HPより参照

日本語能力試験N1の難易度は?

最難易度であるN1の認定の目安は、以下のようなレベルであるとされています。

レベル 認定の目安
N1

幅広い場面で使われる日本語を理解することができる

【読む】

  • 幅広い話題について書かれた新聞の論説、評論など、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文書などを読んで、文章の構成や内容を理解することができる。
  • さまざまな話題の内容に深みのある読み物を読んで、話の流れや詳細な表現意図を理解することができる。

【聞く】

  • 幅広い場面において自然なスピードの、まとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる。

日本語能力試験公式HPより参照

点数は180点満点で、以下のように得点配分されています。

レベル 得点区分 得点の範囲
N1 言語知識(文字・語彙・文法) 0~60
読解 0~60
聴解 0~60
総合得点 0~180

合格点は、100点(180点満点中)です。

ですが、言語知識・読解・聴解のすべてのパートにおいて、基準点(19点)以上とれていることが必要です。

合格率は実施年によって異なりますが、毎年だいたい34〜40%の間におさまっています。

日本語能力試験N1の問題例

日本語能力試験N1では、どのような問題が出題されているのでしょうか?

日本語能力試験公式HPで公開されている問題例はこちらです。

・語彙

(   )に入れるのに最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。

  • 私の主張は単なる(   )ではなく、確たる証拠に基づいている。

1 模索  2 思索  3 推測  4 推移

・文法

次の言葉の使い方として最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。

  • いたわる

1 弱い立場の人をいたわるのは大切なことです。

2 山田さんはこれまでの努力をいたわってくれました。

3 母は孫が遊びに来たら、いつもいたわっていました。

4 政治家は国民の生活をいたわるべきです。

・並び替え

次の分の ★ に入る最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。

  • 人類は、生物学的存在である          ★      文化的存在でもある。

1 にもまして  2 他の  3 と同時に  4 どの種

もっと詳しく見たい方はこちらを参照ください!

【外国人採用で注意!】リアルな日本語レベルとのギャップとは?

外国人を採用する場合、日本語能力レベルを確認する方法のひとつとして日本語能力試験をチェックする採用者も多いでしょう。

しかし、「日本語能力試験のレベル」と「実際に本人が使える日本語レベル」とのギャップがある可能性も頭に入れておくように注意しておきましょう!

ここでは、試験結果と実際の日本語レベルの間にあるギャップを3つお伝えします◎

N1レベルの日本語が話せる・書けるわけではない

N1に合格しているからといって、N1レベルの語彙や文法を使って話せたり、書けたりするわけではありません。

日本語能力試験は、語彙・文法の知識、読む力、聞く力を試す試験だからです。

日本語の話す力・書く力は、人事担当との採用面接日本語教師との会話を通してなど、日本語能力試験以外のところで測る必要があります。

中国語圏の学習者には有利な試験

この試験の言語知識(文字・語彙・文法)・読解パートは、中国語圏の学習者にとってかなり有利になる試験です。

中国語と日本語の漢字は、表記も意味も似ている(あるいは同じ)ものが非常に多いからです。

わたしの中国人の知人は、「中国人にとってN1は本当に取りやすい。中国人だけ違う試験内容にしないと平等じゃないよ。」と言っていました(笑)

日本語で理解していなくても点数が取れてしまう可能性がある、ということも注意しておきましょう。

ビジネス日本語の知識がない

特に外国人雇用を考えている方に注意していただきたいのは、「N1に合格したからといってビジネス日本語の知識があるわけではない」ということです。

メールの書き方はもちろん、日本語学習者にとって”敬語を正しく使うこと”は非常に難しいです。

仕事で使える日本語力があるかをみたい場合は、「アルバイトでどんな仕事をしていたのか」「年上の人たちと話す機会はどれくらいあったのか」なども確認しておきたいポイントです。

【日本語能力試験N1の日本語レベル】まとめ

  • 日本語能力試験は留学、就職、昇給・昇格、ビザ取得等の目的で受験されている
  • N1〜N5レベルがあり、N1は最難関
  • N1の合格点は180点中100点
  • N1の合格率は34~40%
  • 語彙・文法力、読解力、聴解力を測る試験
  • 話す・書く能力は測られていない
  • ビジネス日本語力も測られていない
  • 中華圏の学習者に有利である
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伊藤えり子

運営情報
関東在住の現役日本語教師。日本語教育能力検定試験、日本語教師養成講座を保持。実際の指導はもちろんのことオンライン事業立ち上げや教材の開発、また一般企業で経験を活かした独自の視点で情報を発信中。日本語教師キャリア マガジンのライター