日本語教育におけるアスペクトとは?わかりやすく丁寧に解説!

日本語教育の文法体系 アスペクト

日本語教育能力検定試験の勉強をしていると「アスペクト」が出てきます。

アスペクトって何だっけ….
テンス、モダリティ、ヴォイスとの違いが分からない….

このように感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

本記事は「日本語教育におけるアスペクト」についてどこよりもわかりやすく解説。

日本語教育能力検定試験を受験予定の方は最後までお読みください。


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アスペクトを理解しよう

検定試験の出題範囲で、アスペクトは「言語」の「日本語教育のための文法体系」に該当します。
文法体系には、アスペクトの他、テンス、モダリティ、ヴォイスも含まれるので、検定試験受験においては、それぞれの文法体系をしっかり理解しておくことが大切です。

区分主要項目
社会・文化・地域世界と日本の社会と文化/日本の在留外国人施策/多文化共生(地域社会における共生)/日本語教育史/言語政策/日本語の試験/世界と日本の日本語教育事情
言語と社会社会言語学/言語政策と「ことば」/コミュニケーションストラテジー/待遇・敬意表現/言語・非言語行動/多文化・多言語主義
言語と心理談話理解/言語学習/習得過程(第一言語・第二言語)/学習ストラテジー/異文化受容・適応/日本語の学習・教育の情意的側面
言語と教育日本語教師の資質・能力/日本語教育プログラムの理解と実践/教室・言語環境の設定/コースデザイン/教授法/教材分析・作成・開発/評価法/授業計画/教育実習/中間言語分析/授業分析・自己点検能力/目的・対象別日本語教育法/異文化間教育/異文化コミュニケーション/コミュニケーション教育/日本語教育とICT/著作権
言語一般言語学/対照言語学/日本語教育のための日本語分析/日本語教育のための音韻・音声体系/日本語教育のための文字と表記/日本語教育のための形態・語彙体系/日本語教育のための文法体系/日本語教育のための意味体系/日本語教育のための語用論的規範/受容・理解能力/言語運用能力/社会文化能力/対人関係能力/異文化調整能力

「アスペクト(aspect)」は相で、動作の時間的局面を表す文法形式です。

アスペクトの時間的局面は「開始直前」「開始」「進行」「完了」などがあります。
以下の表では、「ところ」「ている」など太字表記の部分がアスペクトです。

アスペクト(相)例文
開始直前これから昼ご飯をたべるところだ。
開始ご飯をすぐ食べ始めた
昼ご飯を食べかけた時にインターホンが鳴った。
子どもが突然泣き出した
進行今、昼ご飯を食べている
お腹がいっぱいになるまで食べ続ける
仕事が終わりつつある
完了もう全部食べてしまったよ。
今、昼ご飯を食べたところだ。
今、昼ご飯を食べ終わったばかりだ。
子どもが泣きやんだ

以下、検定試験で頻出するアスペクトの用法を一挙に解説していきます。

「~ている」の用法

「~ている」の用法には以下のようなものがあります。

  • 完了
  • 習慣・反復
  • 形容詞的用法
  • 変化の結果の状態
  • 動作や状態の継続・進行
  • 現在に関する過去の出来事や経験

それぞれ順番に見ていきましょう。

完了

「~ている」の用法の1つ目は「完了」です。

「私はもう昼ごはんを食べ終わっている。」 I have already finished lunch.

「食べ終わっている」の「~ている」は完了を表しています。

習慣・反復

「~ている」の用法の2つ目は「習慣反復」です。

「私は毎日15分間日本語を勉強している。」 I study Japanese for 30 minutes every day.
「彼はその歌を何度も歌っている。」 He sings the song over and over.

「勉強している」の「~ている」は習慣を、「歌っている」の「~ている」は反復を表します。

形容詞的用法

「~ている」の用法の3つ目は「形容詞的用法」です。

「その道路は曲がりくねっている。」 The road is winding.

形容詞的用法はそのものの性質や様子を表し、通常は「~ている」の形で使います。

変化の結果の状態

「~ている」の用法の4つ目は「変化の結果の状態」です。

「山田さんは結婚している。」 Mr. Yamada has been married.

「結婚している」の「~ている」は変化の結果の状態を表します。

動作や状態の継続・進行

「~ている」の用法の5つ目は「動作や状態の継続・進行」です。

「彼女は今ご飯を食べている。」 She is eating lunch.

「食べている」の「~ている」は動作や状態の継続・進行を表します。

現在に関する過去の出来事や経験

「~ている」の用法の6つ目は「現在に関する過去の出来事や経験」です。

「そのチームは何度も優勝している。」 The team has won a champion many times.

「優勝している」の「~ている」は現在に関する過去の出来事や経験を表します。

「~てある」の用法

「~てある」の用法は以下のようなものがあります。

  • 準備や効果の継続
  • 動作の結果が残っている状態

それぞれ順番に見ていきましょう。

準備や効果の継続

「~てある」の用法の1つ目は「準備や効果の継続」です。

「そのホテルをすでに予約してある。」 I’ve already booked the hotel.

「予約してある」の「~てある」は準備や効果の継続を表します。

動作の結果が残っている状態

「~てある」の用法の2つ目は「動作の結果が残っている状態」です。

「壁に写真が飾ってある。」 The picture has been decorated on the wall.

「飾ってある」の「~てある」は動作の結果が残っている状態を表します。

「~ておく」の用法

「~ておく」の用法には以下のようなものがあります。

  • 準備
  • 放任・放置
  • 一時的措置

それぞれ順番に見ていきましょう。

準備

「~ておく」の用法の1つ目は「準備」です。

「出かける前に夕食を作っておく。」 I will cook dinner before I go out.

「作っておく」の「~ておく」は準備を表します。

放任・放置

「~ておく」の用法の2つ目は「放任・放置」です。

「長時間ゲームをさせておくのはよくない。」 It’s not good to allow him to play games.
「そこに置いておいてくれる?」 Could you leave it there?

「ゲームをさせておく」の「~ておく」は放任を表し、「置いておく」の「~ておく」は放置を表しています。

一時的措置

「~ておく」の用法の3つ目は「一時的措置」です。

「荷物を預かっておきます。」 I’ll take your bag for you.

「預かっておきます」の「~ておく」は一時的措置を表します。

「~てみる」「~ていく」「~てくる」「~てしまう」「~ところだ」「~たことがある」「~(する/の)ことがある」の用法

「~てみる」

「この本、読んでみる。」 I’ll try to read this book.

「読んでみる」の「~てみる」は願望を表します。

「~ていく」「~てくる」

(空間的用法)
「パーティーにこの前買った服を着ていった。」 I wore the clothes I bought it the other day.
「誰かがこっちに近づいてくる。」 Someone is coming this way.

(時間的用法)
「近い将来、人口は増え続けていくだろう。」 The population is increasing near the future.
「最近、日に日に寒くなってきた。」 Recently, it’s getting cold day by day.

「~ていく」「~てくる」にはそれぞれ「空間的用法」と「時間的用法」があります。

「~てしまう」

「宿題を終えてしまった。」 I have finished homework.
「すぐ部屋を片づけちゃうから待ってて。」 I’ll clean my room soon, so wait a second.
「彼女を怒らせてしまった。」 I made her angry.

「終えてしまった」の「~てしまう」は完了、「片付けちゃう」の「ちゃう(~てしまう)」は未来完了、「怒らせてしまった」の「~てしまう」は後悔を表します。

「~ところだ」

「今から昼ご飯を食べるところだ。」 I’ll have lunch from now.
「今、昼ご飯を食べているところだ。」 Now, I’m having lunch.
「さっき、昼ご飯を食べたところだ。」 I have had a while ago.

「食べるところだ」の「~ところだ」は直前、「食べているところだ」の「~ところだ」は最中、「食べたところだ」の「~ところだ」は直後を表しています。

「~たことがある」

「私はアフリカに行ったことがある。」 I have been to Africa.

「行ったことがある」の「~たことがある」は経験を表します。

「~(する/の)ことがある」

「私は東京に行くことがある。」 I sometimes go to Tokyo.
「その店は土曜日は休みのことがある。」 The shop sometimes close on Saturdays.

「~することがある」「~のことがある」はそれぞれ動詞、名詞に接続します。

まとめ

本記事は「日本語教育におけるアスペクト」について解説してきました。

内容をまとめると….

  • 「アスペクト(相)」:動作の時間的局面を表す文法形式
  • 「~ている」の用法:完了、習慣・反復、形容詞的用法、変化の結果の状態、動作や状態の継続・進行、現在に関する過去の出来事や経験
  • 「~てある」の用法:準備や効果の継続、動作の結果が残っている状態
  • 「~ておく」の用法:準備、放任・放置、一時的措置
  • 「~てみる」の用法:願望
  • 「~ていく」「~てくる」の用法:空間的、時間的
  • 「~てしまう」の用法:完了、未来完了、後悔
  • 「~ところだ」の用法:直前、最中、直後
  • 「~たことがある」の用法:経験
  • 「~(する/の)ことがある」の用法:時々するの意味

「日本語文法の基礎10選」では基本的な文法項目を取り上げています。

下記では、混合しやすい文法体系「テンス」についてまとめています。
合わせてご一読ください。

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池田早織

運営情報
フリーランスの日本語教師兼ライター。日本語教育能力検定試験合格、日本語教師養成講座420時間修了。公的教育機関での常勤講師、技能実習生向けの日本語会話動画作成など、社会人や留学生、外国人児童・生徒への指導を含め上級者から初級者まで幅広く経験。アジア圏、欧米圏問わずこれまで約5,000人以上の指導に携わる。
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