【要点まとめ◎】日本語を教える前に知っておきたい日本語文法の基礎10選!

外国人に日本語を教える初心者のために、「これだけは知っておきたい!」という日本語文法の基礎をまとめました◎

日本語ネイティヴでも、わたしたちが日本語の文法について勉強する機会って、実はあまりないですよね。

普段何気なく話しているはずの日本語について、文法的に理解する、説明するのはとても難しいことです。

日本語を勉強する学習者が間違った日本語を使ったときに、「どうして間違っているのか?どうして不自然な日本語なのか?が少しでも理解できるようになる」ためのヒントになればと思います◎

【日本語文法の基礎①】文の構造

3つの基本文型

日本語は主語述語があります。

下の文では「佐藤さんは」が主語で、「行きました」が述語です。

佐藤さんは 学校へ 行きました

この主語と述語を含んだ文は、以下の3つの基本文型に分けられます。

日本語には、「動詞が述語になる文型」「形容詞が述語になる文型」「名詞が述語になる文型」の3つがあります。

佐藤さんは 学校へ 行きました〈動詞の述語〉

佐藤さんは かっこいいです〈形容詞の述語〉

佐藤さんは 日本語教師です〈名詞の述語〉

文節の種類

ここまでは、主語と述語のみ触れましたが、文節の種類はまだまだあります。

下の文の「友達と」「学校へ」は、修飾語といいます。

ほかの文節を詳しく説明するのが修飾語です。

佐藤さんは 友達と 学校へ 行きました。

続いて、文と文をつなぐ役割をする接続語です。

下の文の「だから」や「そして」「しかし」などが接続語となります。

今日は雨が降りそうだ。だから、傘を持って行った。

最後は、他の文節とは関係なく文節が孤立している独立語です。

あいさつ・呼びかけ・感動などをあらわします。

下の文で言うと、「こんにちは」「さあ」が独立語にあたります。

こんにちは、今日もよろしくお願いします。

さあ、出発しようか。

【日本語文法の基礎②】形容詞と形容動詞

状態や性質などを表すのが形容詞です。

形容詞は、言い切るときの最後が「い」で終わります

この犬は、とてもかわいい

赤い服がほしい。

試合に負けて、悔しい

そして、形容詞と同じく状態や性質などを表すのが形容動詞です。

形容動詞は、言い切るときの最後が「だ」で終わります

このブランドは、とても有名だ

夜景がとても綺麗だ

静かな場所に行きたい。

形容詞と形容動詞ですが、日本語教育においてはそれぞれ「い形容詞」「な形容詞」と呼ばれ、どちらも形容詞として分類されます。

名詞を修飾するときに「い」(例:赤い服)で終わるのが「い形容詞」「な」(例:静かな場所)で終わるのが「な形容詞」となる、と学習者には説明をしています。

形容詞  → い形容詞

形容動詞 → な形容詞

【日本語文法の基礎③】動詞の活用

動詞の3グループ

日本教育において、動詞は3つのグループにわかれます

それぞれ、1グループ、2グループ、3グループと呼びます。

どのように分けられるかというと、否定形にしたときの「〜ない」の前部分が50音の「あ段」になるか「い段・え段」になるかによって分けられます。

「あ段」になる動詞は1グループ、「い段・え段」になる動詞は2グループ、「来る・する」だけ特別に3グループにわかれています。

1グループ(行く→行ない、読む→読ない、書く→書ない)

2グループ(見る→ない、寝る→ない、忘れる→忘ない)

3グループ(来る、する)

可能形や受身形など動詞の形がかわるときに、その変形の仕方には一定のルールがあります。

3つのグループそれぞれで、同じ変形の仕方になるため「”行く”は1グループだから、可能形はこう変化するんだな」と学習者が正しく動詞を変形しやすいようになる、というわけです。

グループ分けの教え方

3グループの分け方を学習者に教える際の注意点です。

わたしたち日本人は、動詞の否定形がわかっているので「”読む”の否定形は”読まない”、だから、1グループだ!」とすぐに判断できます。

ですが、学習者はそもそも各動詞の否定形がどんな形になるのかを知りません。

そのため、学習者には以下のようなルールを教えて、自分でグループ分けができるように理解してもらいます。

実は「-iる」「-eる」で終わる動詞の中でも1グループに属するものがあったりするのですが、今はざっくりと説明するために詳細なルールは省きたいと思います。

1グループ 「-u」で終わる動詞(行くiku、読むyomu

2グループ 「-iる」「-eる」で終わる動詞(見るmiru、忘れるwasureru)

3グループ 「する」「来る」(この2つのみなので、覚えてもらう※)

【日本語文法の基礎④】他動詞・自動詞

動詞には、他動詞自動詞があります。

目的語が必要なのが他動詞で、目的語が必要ないのが自動詞です。

  • 私はドアを閉めた。→ 「閉める」は他動詞

(私は閉めた× → 何を閉めたのか目的語が必要)

  • ドアが閉まる。→ 「閉まる」は自動詞

(目的語がなくても文が成立する)

もし学習者が他動詞と自動詞の区別がついていないと、このような間違いが起こったりします。

×私はドアを閉まる。(「閉まる」が他動詞だと思っている)

【日本語文法の基礎⑤】時制を表すテンス

時制を「テンス」といいます。

日本語のテンスには述語の「現在形」と「過去形」、2つの形式があります。

現在形は「現在」と「未来」を表す

「いる」「食べる」「勉強する」は現在形です。

この現在形は大きく分けて「現在」と「未来」の2つを表します。

「現在」

今、自分の部屋にいる。

図書館で勉強する。

朝ごはんを食べる。

「未来」

明日、学校に行く。

これから、友達と遊ぶ。

現在より前は「過去形」

「現在」と「未来」を表すのが「現在形」に対して、現在より前=過去を表すのが「過去形」です。

「いた」「食べた」「勉強した」などが「過去形」ですね。

「過去」

さっきまで、あそこのコンビニにいた。

8時に朝ごはんを食べた。

日本語を1時間勉強した。

【日本語文法の基礎⑥】動作の段階を表すアスペクト

「開始前なのか」「開始したところなのか」「動作の最中なのか」「終了したところなのか」など、ある動作がどの段階にあるのかを示す文法形式のことをアスペクトといいます。

それぞれの段階をアスペクトとして表してみると、以下のようになります。

① 開始前    「読むところだ」「読みかける」

② 開始したところ「読みはじめる」「読みだす」

③ 動作の最中  「読んでいる」「読んでいるところだ」

④ 終了したところ「読みおわった」 

【日本語文法の基礎⑦】動詞の態/ヴォイス

動作が行われたことを表現するとき、誰に焦点を合わせて表現するかという概念が「態/ヴォイス」です。

能動態、受動態、使役態などがあり、誰に焦点を合わせるかによって、以下のように表現がかわります。

AがBを盗む(能動態)

BがAに盗まれる(受動態)

CがAにBを盗ませる(使役態)

【日本語文法の基礎⑧】気持ちを表すモダリティ

コミュニケーションに使われる文には、「話題の内容」と「話し手の主観的な心的態度」が含まれています。

「今日は雨が降るだろう。」という文の「今日は雨がふる」は「話題の内容」であり、「だろう」は「話し手の主観的な心的態度」です。

この「話し手の主観的な心的態度」を「モダリティ」と呼びます。

「〜べきだ」「~ようだ」「~らしい」もモダリティの表現の一つです。

【文法解説】日本語能力試験 JLPT N5「~でしょう」(確認・同意)例文・導入例・誤用例も!

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【日本語文法の基礎⑨】助詞

名詞の後ろについて動詞・形容詞との意味関係を示すのが「助詞」です。

「が」「を」「に」「の」「と」などがあります。

例えば、それぞれの( )にどの助詞が入るかによって、意味が変わります。

佐藤さん( )田中さん( )祝う。

佐藤さん(が)田中さん(を)祝う。

佐藤さん(と)田中さん(が)祝う。

このように、「助詞」は名詞と動詞・形容詞の意味関係を決める重要な役割をはたしています。

【日本語文法の基礎⑩】敬語表現

敬語表現は、以下の5つに分類されます。

① 尊敬語 

「社長がいらっしゃる」「先生がおっしゃる」「召し上がる」

② 謙譲語Ⅰ:「伺う・申し上げる」型 

自分側の行動の表現を低めて向かう先の人物を立てる。

「ただいま伺います」「私の意見を申し上げます」

③ 謙譲語Ⅱ:「参る・申す」型

話や文章の相手に対して丁重に述べる。  

「夜も更けて参りました」「私の名前は佐藤と申します」

④ 丁寧語:「です・ます」型。

「これは、友人からのお土産です」「これから会議室に行きます」

⑤ 美化語:「お酒・お料理」型。

ものごとを美化する。

「お酒」「お料理」「お菓子」「お箸」

ここまで読んで、日本語教師についてもっと深く知りたい!仕事にすることも興味がある!という方は下記の記事も参考にしてみてください◎

日本語教師になるには?

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【知っておきたい日本語文法の基礎10選!】まとめ

  • 日本語には「3つの基本文型」がある。
  • 形容詞は「い形容詞」、形容動詞は「な形容詞」という。
  • 動詞は形によって3つのグループに分けられる。
  • 動詞には「他動詞」と「自動詞」がある。
  • テンスは、現在と未来を表す「現在形」と過去を表す「過去形」がある。
  • アスペクトは、動作がどの段階にあるのかを示す文法形式。
  • ヴォイスは、動作を表現するとき、誰に焦点を合わせて表現するかという概念。
  • モダリティは「話し手の主観的な心的態度」。
  • 「助詞」は、名詞と動詞・形容詞の意味関係を決める重要な役割をはたす。
  • 敬語表現は、尊敬語、謙譲語I、謙譲語II、丁寧語、美化語の5つに分類される。
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伊藤えり子

運営情報
関東在住の現役日本語教師。日本語教育能力検定試験、日本語教師養成講座を保持。実際の指導はもちろんのことオンライン事業立ち上げや教材の開発、また一般企業で経験を活かした独自の視点で情報を発信中。日本語教師キャリア マガジンのライター