この記事では、今年日本語教育能力検定試験を受ける方に向けて、ダイグロシアについて解説していきます。
勉強しても覚えづらい用語「ダイグロシア」、どの分野のどういう意味の用語かしっかり確認しておきましょう。
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ダイグロシアとは?
ダイグロシアとは、ファーガソンによって提唱された社会言語学の用語で、日本語では「二言語変種使い分け」などと翻訳されます。
2つの言語が一つの社会の中に存在し、使い分けられている状況のことです。
この定義のポイントは、2つの言語はお互いに競合したり干渉したりしておらず、場面や状況によって使い分けの基準が明確に存在していることです。
H変種とL変種
使い分けられる2つの言語には名前があり、片方をH変種(高変種、High Variety)、もう片方をL変種(低変種、Low Variety)と呼びます。
つまり、2つの言語には社会的地位があり、H変種は社会的地位が高く、L変種は低いということです。
H変種は、教育、報道、宗教などで使われる言語変種で、学校で書き方や文法を習って覚える言語です。
書き言葉で使われることも多く、正書法がある場合が多いのもH変種の特徴です。
一方L変種は、家族同士、友人同士で使われる口語で、そのため書き言葉がない場合も多いです。
また、L変種は家族や友人との会話を通して、自然に習得されるのが特徴です。
ダイグロシアとバイリンガリズムの違い
ちなみにダイグロシアと似た現象にバイリンガリズムがありますが、ダイグロシアと何が違うのでしょうか。
ダイグロシアもバイリンガリズムも、2つの言語を使い分けるという点では同じですが、バイリンガルはその人個人の状態、ダイグロシアは社会状況を言います。
一人の人が2つの言語を使い分けている場合はバイリンガル、1つの社会が基準を持って2つの言語を使い分けている場合はダイグロシアと言います。
ポリグロシアとは
また、一つの社会の中で3つ以上の言語が使い分けられている状況を、ポリグロシアと言います。
ダイグロシアの例
ではダイグロシアが起きている国や地域の例を見ていきましょう。
本記事ではダイグロシアの例としてよく取り上げられる国や地域をピックアップして紹介します。
スイスのドイツ語圏
公式の場面や文書では標準ドイツ語(H変種)、日常会話ではスイス方言のドイツ語(L変種)が使われています。
アラビア語圏
アラビア語圏では、報道や書籍では正則アラビア語(H変種)が使われていますが、日常会話は各国や地域で異なる言語や方言(アーンミーヤ)が使われています。
ギリシャ
ギリシャでは文語としてカサレヴサ(H変種)を使い、口語としてディモティキ(L変種)が使われています。
シンガポール
シンガポールは多民族国家で、主に教育や公式の場では標準シンガポール英語を使いますが、同じ民族間、家族間ではそれぞれの民族語の影響を強く受けたシングリッシュを使うそうです。
ちなみに、日本にも標準語だけでなく様々な地域方言や敬語などが存在しますが、日本の場合は、「言語変種の共存」であって、ダイグロシアとは言えないようです。
以上が、ダイグロシアの用語解説でした。
聞きなれない用語ですが、例と一緒に覚えておきましょう。
まとめ
- ダイグロシアとは、2つの言語が一つの社会の中に存在し、使い分けられている状況のことである。
- 2つの言語は社会的地位によってH変種とL変種と呼ばれる。
- H変種は教育、報道、宗教などで使われる言語変種で、学校で書き方や文法を教えられ習得する。
- L変種は、家族同士、友人同士で使われる口語で、日常会話の中で自然に習得される。
- ダイグロシアは社会規模の2言語併用という点で、バイリンガルとは異なる。
- 3言語以上が使い分けられている社会状況をポリグロシアと言う。
日本語教師キャリア マガジン編集部
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