少子高齢化と人口の減少が進む中、外国人労働者の需要が高まっていることから、その外国人に日本語を教える日本語教師の仕事に注目が集まっています。
しかし、注目をされていながらも、以前日本語教師に対するネガティブなイメージは消えません…
果たして「日本語教師になるのはやめたほうがいい」は本当なのか!?
日本語教師のメリット・デメリットを考えつつ、実際はどうなのか、現役日本語教師の目線から考察してみたいと思います!
目次
【日本語教師はやめたほうがいい?】日本語教師の働き方について
「やめたほうがいいか」の議論をするために、まずは日本語教師の働き方(雇用形態)について解説します!
日本語教師の働き方(雇用形態)は大きく専任(常勤)、非常勤の2つに分かれます。
専任
専任(常勤)は、日本語学校等の学校機関に正社員として雇用され、授業での日本語指導に加え、学校内の事務業務(学生管理・卒業式等イベント運営)も行います。
給与が安定した中で働くことが出来ることはメリットですが、授業の負担が重い中で、追加業務が発生するため、専任講師には多忙な方が多いです。
非常勤
一方で、非常勤はその名の通り常に勤務している訳でなく、週に数日決まった時間に学校へ行き授業を担当します。
自分のペースで働く時間を選ぶことが出来ることはメリットですが、コロナウイルスの様な不況が発生すると授業がカットされるため給与が安定しづらいことはデメリットでしょう。
もう1つポイントなのは、日本語教師にはこの非常勤日本語教師として働く先生の割合がとても多い点です。
平成30年度 文化庁国語課の「国内の日本語教育の概要」によると日本語教師数全体41606人の内訳は、ボランティアが23,043人(55.4%)と最も多く、続いて、非常勤が12,908人(31.0%)、常勤(ここでは専任の意味)が5,655人(13.6%)の順となっています。
有給で働く日本語教師の内、約70%が非常勤講師という事ですね!
このように日本語教師の仕事を考えるときに、専任は業務が多く大変だが、非常勤は保険に加入できず収入も不安定なため、結果日本語教師はやめたほうがいいと言う人が多いようです。
【日本語教師はやめたほうがいい?】「やめた方がいい」理由
「日本語教師はやめたほうがいい」と言われてしまうのは、こんな理由があります‥
① お給料が高くない
「やめた方がいい」と言われてる一番の理由として、お給料が高くなく経済的に安定しにくいということがあります。
国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均年収は「433万円」となっています。
一方で、日本語教師キャリアが日本語教師220名へ独自にアンケートを行なった結果、専任日本語教師の平均年収は「約330万円」という結果となりました。
こちらはアンケート結果に基づいたものであり、あくまで参考データとはなりますが、けっしてお給料が高くない業界であるとは言えるでしょう。
またお給料が高くないだけではなく、「福利厚生があまり充実していない傾向にある」というのも経済的に安定しにくい原因のひとつとなっています。
さらに、「日本語教師の働き方について」でもお話ししたとおり、専任講師よりも非常勤講師やボランティアとして活躍している教師の方のほうが圧倒的に多く、より安定できる「正社員」という雇用形態で雇ってもらえる場所がそもそも少ないという日本語教育業界の現状もあります。
② 多忙でブラックな職場もある
「業務時間外に膨大な時間をかけて教案作成をする」「サービス残業ばかり」など、一部では労働環境があまりよくないのも理由のひとつです。
もちろん、日本語教育業界以外にもブラックといわれる企業はあり「日本語教育業界にはブラックな職場ばかり」というわけではありません。
その中で「長時間の時間外労働を強いられた」「教案作成にかける時間に給料が発生しないのはおかしい」といった日本語教師経験者の声をきいて、日本語教師になるのに抵抗があると感じてしまう人もいるようです。
③ 離職率が高い?
「日本語教師の離職率が高い」という話を聞いて、やめたほうがいいと考える人もいるようです。
実際に離職率は高いのか、高くないのかは働く場所によってさまざまですが、一般的な企業とくらべると高い傾向にあるのは事実でしょう。
理由は「収入が低い」「激務に耐えられない」「そもそも非常勤の割合が高い業界だから」などがあります。
④ キャリアアップのためには、修士が必要
「キャリアアップのために、大学で日本語を教えたい!」という場合には、「修士」以上の学歴が必要になります。
大学院に2年間通うには、時間も高い学費も必要になるので「ハードルが高い」と考える人もおおくいます。
さらに「修士」課程を終えたとしても、大学の日本語講師の枠は限られており、かならずしも大学で専任日本語講師に就けるとはかぎりません。
【日本語教師はやめたほうがいい?】「やった方がいい」理由
反対に、「日本語教師はぜひやってみるべきだ」という意見も多数あります。
どのような理由で「やったほうがいい」といわれているのでしょうか?
① 働き方次第で「低収入」「激務」は解決できる
最近では、日本語教師の働き方は多様化してきています。
働き方を自分で工夫することで「安定的な収入を得る」「業務量を調節する」ことができます!
日本語教師の働き方〈例〉
- 本業のほかで、副業としてオンライン日本語教師をする
- 「日本語教師+プログラマー」など、二足のわらじで収入を確保
- Youtubeなどで日本語を教える動画を投稿し、お金を稼ぐ
- 自分でレッスン内容・料金を設定できるフリーランスになる
高収入が狙えるわけではありませんが、「日本語教師+α」あるいは「より稼げる場所で日本語を教える」ことで「低収入」「激務」の不安をなくすことができます。
② 海外で働ける
日本語教師は「海外で働く選択肢をもつ」ことができる職業です!
世界中で日本語教師の求人があり、とくに日本語教育が活発な「アジア圏」では需要が高いです。
特にアジア圏で働く場合には、現地の平均収入を上回る給与が得られることも少なくありません。
「海外で働いてみたい」という人には、ぜひ挑戦してみるべき職業だといえますね。
③ やらなかったら後で後悔する
本当にやりたいことなら「やらないで後悔するよりは、やって後悔したほうがいい」という意見です。
どんな職業、どんな出来事においてもポジティヴな面、ネガティヴな面はあります。
さらに「やってみたら意外と思っていたのと違った!」「ほかの人には合わなかったけど、自分には日本語教師合ってるかも」という新たな発見もあるかもしれません!
「日本語教師やめたほうがいい」という意見だけ聞いて、一度も挑戦しないのはもったいない話かもしれませんね。
【日本語教師はやめたほうがいい?】日本語教師に向かない人って?
上記のように日本語教師はメリット・デメリットがあり、人によって「向いている」「向いていない」が分かれていると思います。
では、実際に、日本語教師はやめたほうがいい人とはどんな人なのでしょうか。
働き方は多様化しているとはいえど、現在の一般的な日本語教師の仕事状況、環境を踏まえて、
- 残業や、勤務時間外の労働は絶対にしたくない人
- やりがいよりも効率重視でお金を稼ぎたい人
以上の人は日本語教師にあまり向きません。
残業や、勤務時間外の労働は絶対にしたくない人
日本語教師の仕事は(特に新人のうちは)授業準備にかなりの時間がかかります。そのため、時間外に仕事(授業準備)をしなければならない場合が多いです。
もしこれが耐えられない場合、日本語教師として働くのは中々厳しいです。
やりがいよりも効率重視でお金を稼ぎたい人
上述の通り、日本語教師の仕事は効率よくお金が稼げる仕事とは言い難いです。
専任の場合は月20~28万円、非常勤の場合は何コマ担当するかによりますが1コマ(45分)で1,800~2,000円くらいの報酬が相場です。
ただ、実際の勤務時間以外で準備にかかる時間が多いため、時給換算すると1,000円以下。。。なんてこともザラにあると考えて良いでしょう。
またこの2つ以外にも、私の知り合いの講師にどんな人が日本語教師に向いていないかを聞いてみたので簡単にまとめてみます。
日本語教師になるか悩んでいるという人は参考程度に目を通してみてください!
- 外国人と過度に親しくなりたい、友達になりたい人
- 教えることにこだわりすぎてしまう人(正しい日本語でないとダメ!)
- 政治に極端に興味がない、または政治の話しかしないという人
- 自分の国や他国文化に興味がない
【日本語教師はやめたほうがいい?】日本語教師に向いている人って?
では、日本語教師に向いている人とはどんな人なのでしょうか。大きく4つまとめてみました!
- 仕事はやりがい重視で選びたい人
- 海外で働きたい人
- お金はほどほどに、自分のペースで働きたい人
- 年齢関係なく働いていきたい人
仕事はやりがい重視で選びたい人
日本語教師の大半はこれに当てはまる人だと思いますが、やりがいは本当に感じやすい仕事だと思います。
私自身も、自分の担当した生徒から卒業時期に「先生から日本語を教えてもらえて良かった」と言われた時は、今までの授業準備の苦労が少し報われた気がしたのを今でも覚えています。
海外で働きたい人
日本語教師は仕事の特性上、海外での求人が多いことも特徴の一つです。
日本語学習者はアジア圏が圧倒的に多いため、日本語教師の海外求人もアジアが多いのですが、たまに英語圏(ヨーロッパ・オーストラリア等)の求人も出てきます。
ただ英語圏の求人は非常に人気で、応募が殺到するようなのでこまめにチェックしておいた方がよさそうです。。。
お金はほどほどに、自分のペースで働きたい人
非常勤講師は上述のように週1~週5まで、自分の働きたい時間で働くことが出来ます。
ですので、例えば子育て中のお母さんで通勤は週2回午後だけ、授業準備は家で行うなんてことも出来ます。
これも日本語教師に女性が多い1つの理由かもしれませんね。
年齢関係なく働いていきたい人
日本語教師は定年がないことも特徴の一つです。(すべての学校で、という訳でなく定年がしっかり定められている職場もあります。)
実際に60代後半からでも日本語教師の資格を取得して、インドネシアの高校で働いた方もいるみたいです。(すごいバイタリティー。。。)
他の仕事だと中々こんな働き方は出来ないですよね。
ここまで読んだ上で、それでも「日本語教師に興味がある、面白そう!」と思った方は、まずは資料の請求をして日本語教師や資格取得についてより詳しく知っていただければと思います!
日本語教師アカデミーでは無料でお近くの日本語教師養成講座の講座資料を一括で取り寄せることが可能ですので、ぜひご利用ください。
※おまけ【日本語教師はやめたほうがいい?】新卒で日本語教師になる場合
この記事を読む人は幅広い世代の方だと思うので、書くか迷ったのですが、新卒で日本語教師になった筆者自身の体験談が誰かの役に立ったら良いなと思い、おまけで新卒向けの内容も書きます。
日本語教師はやめたほうがいいといわれる中でも、特に「新卒で」日本語教師になるのはやめたほうがいいという意見を良く耳にします。
実際に、筆者も学生時代に新卒で日本語教師になることについて教授に相談したところ、「新卒で日本語教師にならなくてもいいのではないか」と言われました。
まさか教授にまでそう言われると思っていなかったので驚いたのですが、実際に新卒で日本語教師になってみて、確かにやめたほうがいいと言われるような理由もあると感じたので簡単に述べます。
新卒で日本語教師はやめたほうがいいと言われる理由として以下のようなことが挙げられます。
- 新卒の場合、なおさら初めから専任になることは難しい
- 中途採用が多い業界なので研修等の新人教育環境が整っていない
- 仮に専任になれたとしても福利厚生は整っていない事が多い
仮に、一般企業の説明会でこのようなことを言われた場合、かなり就活生が引いてしますのではないかと思います。
そのくらい、新卒にやさしくない業界であるということも事実です。
しかし、日本語教育業界も少しずつ変わってきています。
新卒採用を行っている日本語学校も出てきたので、いくつか紹介します。
[国内]
ISI日本語学校 日本語教師新卒正規採用
https://www.isi-education.com/ja/recruit/fresh
[海外]
Navis Human Resourcesインド支社 日本語教師採用
このように積極的に新卒を採ろうという日本語学校も増えてきていますので、一概にやめたほうがいいとは言えなくなってきていますね。
日本語教師になるか悩んでいるという人は参考にしてみてください。
まとめ
- 日本語教師は仕事や雇用の面で不安定であったり、激務が求められるイメージからやめたほうがいいという人が多い
- 「やめたほうがいい」という声だけではなく「やったほうがいい」という意見もある
- 日本語教師に向かない可能性のある人もいるが、大事なのは自分に向いているかどうか
- 新卒で日本語教師になることは有利とは言えないが、一概にやめたほうが良いとは言えない。
日本語教師はやめたほうがいいのかということに対して現役日本語教師の意見も交えながら考察してきましたが、まとめると上記の様になります。いかがでしょうか。
どんな仕事にも苦しいことと楽しいことがあります。日本語教師もその一つです。
そして日本語教師の仕事は、大変な分やりがいも沢山あります。ぜひ、自分のなりたい日本語教師像を模索して、理想の働き方を見つけてください!
すーみん
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