日本語の教え方のポイント!日本語のどこが難しい?【現役日本語教師が解説】

日本語の教え方

世界的にも習得が難しいと言われている「日本語」

日本人でも敬語や漢字などに苦手意識を持っている人も多いと思います。

しかし、これからも人口減少が見込まれる日本で外国人労働者は必ず増えていきます!

もしかしたら、皆さんも急に「日本語を教えて欲しい!」と言われてしまうかも…!

では、日本語を学びたいと思っている外国人にどうやって日本語を教えたらいいのでしょうか?

本記事では現役日本語教師が、初めて日本語を教えるときでも「これを読んだら大丈夫!」という教える際のポイントをまとめています!

外国人に日本語を教える時に、何に気をつけるべきか知りたい!という人はぜひご覧ください!

日本語のどこが難しい?【伝わりやすい話し方のポイント】

まずは「外国人にとって日本語のどこが難しいと感じるのか?」を理解し、相手に伝わりやすい日本語の話し方を知っておきましょう!

学習者の母語によっても難しいと感じる点は多少異なりますが、多くの学習者が感じている日本語の難しいところ日本語の特徴はこちらです↓

①主語や目的語が省略されやすい

日本語は、主語や目的語が省略されやすい言語です。

たとえば、英語だと、”I have to work today”の主語である「 “I”=私」は省略できませんよね。

ですが、日本語だと例のように主語を省略したり、目的語を省略することが頻繁にあるのです!

(例)「今日、どこへ行くの?」

→ 「今日、(あなたは)どこへ行くの?」の『あなたは』が省略されている。

②敬語表現がある

他の言語にはない、尊敬語や謙譲語といった「敬語表現」がとにかく難しい!という学習者がかなり多くいます。

以下は「食べる」の敬語を例にしていますが、「自分と相手の立場」「だれの動作か」によって、尊敬語と謙譲語を使い分けるのは、かなり難しいでしょう。

(例)食べる

→  召し上がる(尊敬語)/ いただく(謙譲語)

③遠回し・曖昧な表現が多い

日本には、言いたいことをはっきり言葉にするのではなく、遠回し・曖昧な表現を使い、その場の空気を読んで会話をする文化があります。

以下の例のように、遠回しに断る際など、異なる文化を持つ外国人にとっては「中途半端な表現で、何が言いたいのか分からない」という人も多いようです。

(例)

A:「明日、映画を見に行かない?」

B:「ごめん、今試験前で・・・」

「映画に行けない」ということを遠回しに伝えている。

④オノマトペが多い

日本語には、擬音語や擬態語など、音や状態を言葉で表現する「オノマトペ」が非常に多くあります。

(例)ベタベタ、しとしと、ドキドキ、ツルツル、など

たとえば、日本人なら「ドキドキ」と聞けば、「緊張している様子」「心臓が速く動いている様子」と瞬時にイメージができますよね。

一方で、外国人学習者にとっては、言葉とイメージが結びつきにくく、オノマトペを覚えるのに苦労している人も多くいます。

⑤「ます/です」以外のくだけた表現(タメ語)が理解しにくい

日本語学習者は、「〜ます」「〜です」という丁寧な表現から学ぶことが多いため、友達や家族と話すときのようないわゆる「タメ語」を理解するのが難しいと感じます。

日本語を教えていても、「友達と話すときの表現や話し方を勉強したい」という学習者も多くいます。

*伝わりやすい話し方のポイント

上記の点を踏まえて、学習者と会話をするときは以下のポイントを意識してみましょう!

伝わりやすい話し方のキホン

  • 主語や目的語を省略しないように意識する
  • 敬語表現は避ける
  • 遠回し・曖昧な表現は避けて、直接的な表現を使う
  • オノマトペを使用しない
  • くだけた表現は避けて「〜ます/です」を使う
  • 長い文章を避けて、一文を短く話す

【日本語の教え方】直接法と間接法とは?

「日本語の教え方」について、まずは、多くの日本語教師が行っている、「直接法」という「日本語で日本語を教える」ときのポイントについてご紹介します!

まず、直接法についてですが、日本の日本語学校ではこの方法が主流です。

「え!?わかりにくいんじゃないの?」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、海外に語学留学する際のことを考えてもらったらわかりやすいと思います。

例えば、英語を学びにアメリカの語学学校へ行くとなった場合、その教室にいるのは決して日本人だけではないですよね?

中国や、韓国からきた人もいるかもしれません。

つまり教室の共通語が日本語ではないので、先生はみんなが学びたい英語を使って教えます。これが「直接法」です。直接法のイメージ

そのため、教室の共通語が同じである、海外の大学の日本語の授業や、海外の中高の選択科目としての日本語のクラスでは、「その国の言語で日本語を教える」、「間接法」という教え方で教える場合もあります。間接法のイメージ

ですが、日本で教える場合は直接法が主流なので、英語ができないから教えられない…と悩む必要はありません!

(ただ、1対1のレッスンで初級レベルの学生が相手の場合、学生の言語ができた方が、意思疎通が簡単です。)

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以下では、直接法での教え方のポイントについて説明します!

【日本語の教え方】ポイント① 絵や写真、ジェスチャーを使って説明

直接法で教える場合、先にも述べましたが、日本語で日本語を教えるので、言葉だけで説明するというのは不可能です。

そのため、多くの絵や写真、ジェスチャーを使って、説明します。

よって、日本語を教える際は多くの準備が必要です。

地図や、チラシなど日常生活で使っているものも教材になります。

また、学生のレベルによって知っている語彙の数が異なります。

例えば、新しい文法を教える時に、未習の語彙ばかり使うと学生は語彙を覚えることに一生懸命になって、文法に集中できません。

習った語彙や学生が知っている語彙を使って文章を作り、文法を教えましょう。

注意すべきポイントは、学生のレベルに合わせすぎて、嘘の日本語を教えないということです。

例えば、「〜てください」という文法を教えるという時に、文法を教えることに一生懸命になって「写真を撮ります、お願いします」と言ってしまう人がいます。

ですが、実際に日本語で話す時に、こんな日本語を使う人はいないですよね。

使わない日本語はおかしな誤解を生みます。そのため、教え方としては、

「体全部の写真を撮りたいです。でも、一人では?✖️(ジャスチャー) では、周りの人に、お願いします。すみません、写真を撮ってください。

と場面を示してから、正しい日本語で教えた方が学生にとってもわかりやすく覚えやすいです。

このように、日本語で日本語を教えるというのは言葉一つをとっても工夫と準備が必要だということがわかりますね!

【日本語の教え方】ポイント② ゆっくりはっきり、発音を意識して

もう一つ、直接法で教える際のポイントは、いつも以上にはっきり、しっかり発音を意識することです。

学生にとって、日本語教師の発音が日本語の発音になります。

意識しすぎておかしな発音になってしまってはいけませんが、もごもご話すと伝わらなかったり、似た発音と聴き間違えてしまったりするので注意が必要です。

特に、日本語の発音が学生の母語にない発音だったりする場合、発音を聞き取ることも至難の技です。

例えば、「わたし」という発音は中国語話者の学生にとってとても発音しにくい言葉です。

そのため、学生の中には「わたし」が「わだし」になっていたり、「わたし」と「わだし」の聞き分けができない人もいます。

このように、日本語教師として働く際には、日本語の音声学の知識も身につけていなければなりません。

また、ここでの注意点は知らず知らずのうちに教師が話してるかもしれない方言についてです。

日本語教師の方言が、学生が生活している地域のもので、普段から聞く可能性がある場合はむしろその方言について教えるということが必要になる場合もあるのですが、注意すべきなのは、日本語教師の方言が、学習者の生活している地域と異なる場合です。

この場合、学生が誤ったアクセントや言葉を覚えてしまう可能性があるので、気をつけなければなりません。

普段から、ニュースをみたり、気になるものはアクセント辞典を確認したりして、注意しましょう。

【日本語の教え方】文法の教え方

では、具体的に文法を教えるということはどういうことなのか、実際の様子(教案)を見てみましょう。

日本語教師が実際に授業をする際は、このように授業で扱う文型・文法をまとめ、学生との会話を予想して書いておく「教案」というものを準備します。

今回は、初級レベルの学生を対象とした授業の流れと予想される会話文を一部紹介します。

使う教科書は、日本語教育業界では有名な「みんなの日本語」です。

教える文法は、第19課の「〜たことがあります」です。

まず、先に簡単な流れを紹介します。

文法を教える際は、導入→練習(基本・応用)→活動 のような流れになります。

【導入】

導入では、その文型・文法を教えるのに一番わかりやすい文を使って使用例を示します

「〜たことがあります」は珍しいことや経験を述べる文型ですので、導入では

「私は、北海道に行ったことがあります。」という文を使うと決めます。(これは各先生によって異なりますし、何が正解というわけではありません。教科書の例文を使ってもいいですし、オリジナルのものを使ってもいいと思います。)

導入文が決まったら、その文に至るまでの場面設定を考えます。

例えば、「旅行は好きですか?」「日本でどこかいきましたか?」「北海道にいきましたか?」と、このように学生に質問していけば、誰か北海道に行ったことがある学生が答えてくれますよね。

もし、誰もいなかったら、その時は教師が、「私は北海道に行ったことがあります」と言ってもいいですね。

実際の会話をイメージするとこのようになります。

実際の会話例(教案)

T=teacher  S=Student

T「みなさん、旅行はすきですか?」

S「すきです!」

T「日本でどこか行きましたか?」

S「東京に行きました。」

T「東京ですか、いいですね!では、北海道はいきましたか?」

S「いいえ、行きませんでした。」

T「そうですか。私は夏に行きました。私は北海道に行ったことがあります。Sさんは行ったことがありません

とこのように、導入文を理解させます。

これが文型・文法指導の導入です。

【練習】

練習はその名の通り、学生がその文型・文法が使えるように練習します。

まずは簡単な基本練習からです。

「〜たことがあります」の場合、動詞の活用である「た形」の練習から始まります。

動詞の活用はひたすら数をこなし、スラスラ言えるようになるまで練習することが大切です。

ここでつまずくと中級以降の文型もうまく使えなくなるので、必ずはじめにしっかり練習させましょう。

基本練習は、機械練習、文法練習などがあります。

機械練習では、動詞を「〜たことがあります」の形で言わせます。フラッシュカードを使う場合も多いです。

(フラッシュカードとは、裏表に動詞の活用前と活用語を記入したカードで学生に素早く活用を言わせるために使用します。)

フラッシュカード

文法練習は、その文法の疑問形・答え方なども練習します。ペアで練習することも多いです。

「みんなの日本語」だと練習A、Bなどは基本練習です。

応用練習は、拡大練習、変換練習などです。

文型だけでなく、助詞・目的語などを用いて完全な文章にします。

「北海道で、スキーをしたことがありますか?」

「いいえ、ありません。でも、北海道で雪まつりを見たことがあります。」

このような文を作らせることも応用練習と言えますね。

「みんなの日本語」だと練習Cや会話の部分は応用練習としても使えます。

最後の活動は文型・文法によってしたりしなかったりしますが、機械的な練習ばかりだと飽きてしまうので、少しゲーム形式でやったり、会話分を作らせたりしてもいいと思います。

以上が、文型・文法の教え方の流れの一例です。

他のやり方をしている先生もいらっしゃいますし、一概にこれがいい方法とも言えませんが、参考程度にご覧ください。

【日本語の教え方】まとめ

以上、日本語の教え方について簡単にまとめました。

突然日本語を教えることになったとしても、このポイントを抑えていれば慌てなくて済むと思います。

ですが、このように日本語を教えるということは決して簡単なことではないということもお分かりいただけたと思います。

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すーみん

運営情報
関西在住の現役日本語教師。日本語教育主専攻卒の新卒非常勤。日本語学校、中・高等学校、企業向けセミナー、オンラインレッスンなど、経験値を上げるため様々な場所で修行中… 若手日本語教師の目線で様々なことを発信します! 日本語教師キャリア マガジンのライター
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