【日本語教育能力検定試験で頻出】 コミュニカティブ・アプローチの特徴まとめ

コミュニカティブ・アプローチ とは??

コミュニカティブ・アプローチは日本語教育能力検定試験でもよく出題される重要な教授法です。

でも、

「勉強したけど、あいまいでよくわからない…。」

「難しい用語が多い…。」

と感じる方も多いのではないでしょうか。

この記事では今年日本語教育能力検定試験を受けようと思っている方や、日本語教師養成講座を受講中の方に向けて、コミュニカティブ・アプローチの特徴と関連する用語について解説していきます。

コミュニカティブ・アプローチとは

「コミュニカティブ・アプローチ(CA)」とは、1970年代に広まったコミュニケーションにつながる教授法の総称です。

ただ「総称」なので、提唱者に関してははっきりしていません。また決まった指導法や指導手順もありません。

ここが、あいまいな印象を受ける人が多い理由かもしれません。

では、コミュニカティブ・アプローチはどうやって誕生したのでしょうか。

コミュニカティブ・アプローチは、1970年以前に広く使われていたオーディオリンガル・メソッドへの批判から誕生しました。

オーディオリンガル・メソッドは、
・形を覚えても日常生活で使えないこと
・練習が単調で学習者のモチベーションが保てないこと
などが問題点とされています。

これらの問題を指摘し、改善するべく1970年代に広まったのがコミュニカティブ・アプローチです。

そのため、コミュニカティブ・アプローチはよくオーディオリンガル・メソッドと比較して考えられます。

この記事でも、まず2つの教授法の違いから見ていきます。

オーディオリンガル・メソッドとの違い

オーディオリンガル・メソッド コミュニカティブ・アプローチ
①考え方 言語形式を重視 意味を重視
②到達目標 言語形式の習得と習慣形成 意思の疎通
③シラバス 文型シラバス(易から難へ) 概念・機能シラバス学習者のニーズに沿ったシラバス
④指導法 ミムメム練習パターン・プラクティス

ミニマルペア

現実のコミュニケーションに近い練習
⑤長所 正確な文法が身につく反復練習により記憶に残る 学習者のニーズに合わせられる日常生活で応用しやすい
⑥短所 現実の使用場面で使えない学習者のやる気が保てない 正確さに欠ける情報の伝達に偏りすぎる

比較してみると、2つの特徴は相反しています。

特に、お互いの長所が短所になっていることがわかります。

では、ここからはコミュニカティブ・アプローチの特徴についてもう少し詳しく解説していきます。

【コミュニカティブ・アプローチの特徴①】考え方

コミュニカティブ・アプローチは2つの理論をもとにしてできた教授法です。

一つは機能主義言語学の「言語は機能である」という考え方で、これは、「話す」、「書く」などの言語的行為は、いつも目的を持って行われるものだ、という意味です。

もう一つは、ハイムズのコミュニケーション・コンピテンスです。

ハイムズは言語の習得には言語使用能力が不可欠だと考えました。

言語使用能力というのは、「誰に、何を、どう話すのか」といった言語使用の適切さに関する能力のことで、つまり場面に合った表現をする能力が必要だ、ということです。

この2つの理論をもとに、コミュニカティブ・アプローチでは「目的をもって言語を使用する場面で、情報が伝えられるか」を重視します。

言い換えると、意味を重視するということです(フォーカス・オン・ミーニング)

極端に言えば、文法が間違っていても言いたいことが伝わればいい、ということです。

【コミュニカティブ・アプローチの特徴②】到達目標

上で説明しているように、コミュニカティブ・アプローチは目的と場面を意識して、情報を伝えることを重視します。

ですから、コミュニカティブ・アプローチの到達目標は、日常生活においてコミュニケーション(意思の疎通)ができることと言えます。

では、この目標を達成するにはどんなシラバスを使って、どんな練習をしたらいいのでしょうか。

【コミュニカティブ・アプローチの特徴③】シラバス

シラバスはウィルキンズの概念・機能シラバスを採用しています。

概念とは、動作の開始や継続、順序、行為者など、機能とは、あいさつする、誘う、情報を求める、といった使用目的です。

つまり、使用目的や必要な機能から指導することを目指したシラバスです。

また、このころから教師主体だった教室活動が、学習者中心へとシフトしました。

そこでシラバスも学習者のニーズを分析して作成されるようになりました。

ですから文型シラバスと違って「易→難」のシラバスになっているとは限りません。

学習者が日常生活で必要なものから教えるという考え方で作成されます。

【コミュニカティブ・アプローチの特徴④】指導法

続いて指導法を見ていきますが、はじめにコミュニカティブ・アプローチには決まった指導法がない、と書きましたね。

確かに、練習の型や手順はありませんが、指導する際に大切なポイントはあります。

それは、現実のコミュニケーションに近い状況で練習することです。

実際のコミュニケーションに近づけるために、以下の3つが重要とされています。
インフォーメーション・ギャップ:相手との間に情報差があること
チョイス:誰と、何を、どう話すか、学習者が選択できること
フィードバック:相手に反応があること

これらを取り入れた教室活動として、ペアワーク、ロールプレイ、ディスカッション、プロジェクト・ワークなどが使われます。

こういった練習を通して、学習したことが日常生活で使えるようになることを目指します。

ここまで見ると、コミュニカティブ・アプローチはとてもいい教授法に見えますね。

問題点はないのでしょうか。

最後に、コミュニカティブ・アプローチの長所と指摘されている問題点も併せて確認しておきましょう。

【コミュニカティブ・アプローチの特徴⑤】長所と短所

上記からわかるように、長所としては次の2つが挙げられます。
・学習者のニーズに合わせることができる
・学んだことを日常生活に応用しやすい

一方で、次のような短所もあります。
・文法や発音に関して正確さに欠ける
・言語が体系的に学習できない

言語形式を重視しないので、形を正しく覚えないまま学習が進んでしまう恐れがあります。

また、「易→難」の順に勉強しないので、少しずつ学習を積み重ねることが難しいと言えます。

これらの批判から、最近はコミュニケーションを重視しても、言語形式にも注意を向ける必要があると考えられています(フォーカス・オン・フォーム)

以上が、コミュニカティブ・アプローチの特徴でした。

短所もありますが、実際のコミュニケーションを意識した考え方は現代でも大切にされています。

実際、ロールプレイやディスカッションのような教室活動は日本語学校でも多く使われています。

現代に通じる教授法の一つとして、ぜひしっかり理解しておくのが良いでしょう。

コミュニカティブ・アプローチ まとめ

  • コミュニカティブ・アプローチはコミュニケーションにつながる教授法の総称
  • 言語形式より意味を重視する
  • 意思の疎通ができることを目標とする
  • 学習者のニーズに合った概念・機能シラバスを採用
  • 現実のコミュニケーションに近い形で練習する
  • 日常生活で応用しやすいが、正確な文法が身につかない

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