目次
はじめに
「日本語教師に興味はあるけど、給料がどれくらいもらえるのかわからない…」「新卒で日本語教師になりたいけど、勤続年数によって給料がどれくらい変わるのかな?」などなど、給料に関して気になる方は多いのではないでしょうか?
そこで今回の記事では、私たち日本語教師キャリアが日本語教師としての勤務経験がある/勤務中である方298名に調査したアンケートをもとに、日本語教師の給料を雇用形態、勤続年数などに分けて詳しく解説します!
アンケート調査の概要
調査主体 : 日本語教師キャリア
調査方法 : Reboot Japan株式会社が運営する「日本語教師キャリア」登録者に登録している調査対象者にインターネット調査
調査対象 : 2023年4月〜2024年3月までの間に有給で(ボランティアは含めない)、学校などの団体(日本語学校、専門学校、大学の留学生別科、日本語教師に研修を行う職場など)に所属して日本語教師としての勤務経験がある/勤務中である方298名
調査期間 : 2024年3月11日〜3月31日
調査地域 : 日本国内・国外
前回の調査結果については、下記ページよりご確認いただけますので、こちらも合わせてご一読ください。
日本語教師の仕事内容
日本語教師の主な仕事は、日本語学習を必要としている外国籍・日本国籍の方に、日本語学習の指導・支援を行うことです。
日本語の文法や発音などを授業で教えたり、授業の前後で教案の準備やテストの採点をしたり…といった仕事がありますが、その他にも、日本語を学習する人の生活の一助となるように、日本の文化や習慣、歴史などを学ぶ機会を設けることも大切な仕事の1つとなります。
日本語教師の働き方はさまざまであり、日本国内の日本語学校や専門学校、大学、インターナショナルスクールで働く教師、海外の日本語学校や日本語課程のある学校で働く教師、フリーランスで働く教師、オンラインで指導する教師などなど、多岐に渡ります。
また、新制度が施行されるのに伴い、進学クラスの他に、就労クラスや生活クラスの増設が見込まれるため、同じ学校の中でも役割の多様化が進むことが考えられます。
日本語教師になるためには…?
一般的に日本語教師になるためには、現時点では以下の3つのルートがあります。
① 大学・大学院の日本語教育主専攻・副専攻を修了する
② 日本語教育能力検定試験に合格する
③ 文化庁の届出受理を受けた日本語教師養成講座(420時間以上)を修了する
※ ③は、4年制大学卒業が必要となります。
しかしながら、日本語教育機関認定法における新たな国家資格、「登録日本語教員」制度が今年度からスタートとなり、日本語教師になるためのルートが新しくなりました。
新たなルートや条件の詳細については、下記の記事にまとめましたので、併せてご確認ください!
日本語教師の将来性 -国家資格化でどう変わる?
現在、世界で日本語を学ぶ学習者数は増加傾向にあり、国際交流基金が2022年に実施した「海外日本語教育機関調査」によると、2021年度における全世界の日本語学習者数は約380万人にのぼります。
日本国内においては、新型コロナウイルス感染症の影響による入国制限等が緩和されたこともあり、2023年末時点での在留外国人数は約341万人と、過去最多を更新しました。
今後も、国内外で日本語を学習する方が増え、日本語教師のニーズがますます高まっていくと想定されます。
また、技能実習生や日本語指導を必要とする児童生徒の増加や、日本語学習のオンライン化なども相まって、日本語教師は、ニーズの高まりとともに、活躍する場の多様化が進んでいます。
一方で、日本国内においては、常勤講師・専任講師ではなく、非常勤講師やボランティアとして日本語教師をしている方が多くを占めていることもあり、日本語教師の給料や福利厚生などに不満を抱く方が少なからずいらっしゃるのが現状です。
ですが、前述の通り、新制度がスタートし、日本語教育の質や、日本語教師の社会的地位の向上に向けた取り組みが進められています。
日本語教師が国家資格になることで、日本語教師の就労面・待遇面の改善など、好影響をもたらすことが期待されています。
日本語教師の給料・平均年収はいくら?
日本語教師として働く場合、専任講師・常勤講師(正社員)と非常勤講師(アルバイト)の大きく2つの雇用形態に大分されます。
雇用形態によって、給料や給与体系が異なる場合が多くあります。
そこで、以下では、専任講師・常勤講師と非常勤講師それぞれについての平均の給料・年収を紹介します。
まずは、回答者の性別比率と年代比率の内訳を紹介します。
回答者の性別比率
今回のアンケートでは、ご回答いただいた方の約4分の1が男性、約4分の3が女性でした。
回答者の年代比率
下記は、年代別の割合をグラフ化したものです。
年代別では、40代〜60代の方が4分の3以上を占めています。
専任講師・常勤講師(正社員・契約社員)
専任講師・常勤講師の平均年収・平均月収は、以下の通りです。
平均年収 : 354万円
平均月収 : 29.5万円
※ 海外・オンラインで働く日本語教師を除く
続いては、年収層ごとの集計結果を紹介します!以下の円グラフをご覧ください。
※ 海外・オンラインで働く日本語教師を除く
グラフを見ると、年収201万円〜300万円が32.6%、年収301万円〜400万円が44.2%と、全体の80%近くを占めています。
続いて、年収401万円〜500万円が20.9%、少数ですが、年収500万円以上の方が2.3%いらっしゃいました。
全体を見ると、年収は300万円前後がボリューム層だと考えられます。
非常勤講師(契約社員・アルバイト/パート・業務委託契約)
続いて、非常勤講師の給与についてご紹介します。
非常勤講師として働く場合は、コマ給か時給で給料が発生する場合が多いです。
本記事では、1コマ45分で換算し、平均コマ給を出しました。
平均コマ給 : 1,988円 / コマ(45分)
※ 海外で働く日本語教師、オンラインで働く日本語教師を除く
3年前に実施したアンケートと比較して、平均コマ給が250円近くアップし、2,000円まであと一歩となりました!
ただし、ご回答いただいた方の多くが都市圏在住の方であるため、地域によってコマ給に差があると考えられますが、給料が少しずつ増加傾向にあるようです。
続いて、コマ給分布について分析した結果が以下の円グラフです。
〜1,000円 : 0.6%
1,001円〜1,500円 : 8.1%
1,501円〜2,000円 : 57.6%
2,001円〜2,500円 : 26.7%
2,501円〜3,000円 : 5.2%
3,001円〜3,500円 : 0.0%
3,501円〜4,000円 : 1.7%
「1,501円〜2,000円」が57.6%と最も多くを占めました。
また、回答者の90%以上が最低でも1,501円以上のコマ給をもらっていることが分かりました。少しづつ、待遇面が改善されてきていると言えるかもしれません。
記事をご覧の方の中には、「非常勤講師として活躍しながら、複数の仕事を掛け持ちしたい!」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで、続いては非常勤講師の平均年収の結果も紹介します!
※ 1か所の所属機関のみの年収になります。掛け持ちも含めた年収ではありません。
〜100万円 : 62.3%
101万円〜200万円 : 32.0%
201万円〜300万円 : 4.9%
301万円〜400万円 : 0.8%
年収100万円以下が半数以上を占めており、続いて、年収101万円〜200万円が32.0%となっています。
非常勤講師として活躍されている方には、結婚後や子育てが落ち着いた後、配偶者の扶養に入って非常勤講師として働く方、定年後に働かれる方も多くいらっしゃいます。
また、日本語教師以外に、アルバイトやパートを掛け持ちしている方や、フリーランスの日本語教師として、専任講師・常勤講師と同等、あるいはそれ以上の年収を得ている方もいらっしゃるなど、非常勤講師としての活躍の選択肢は多岐に渡ります。
上記のような背景が、今回の非常勤講師の年収分布結果に表れていると言えるのではないでしょうか。
日本語教師の給料・年収の違いは?具体例を詳しく解説!
【職場別】日本語教師の給料・年収
まず、職場による給料の違いについて紹介します。
本記事では、それぞれの回答者数は少ないものの、日本語学校、専門学校、大学、日本語教師向けに研修を行う職場の職場ごとの給料・年収の比較データを紹介します!
日本語学校 | 専任講師の平均年収 : 318万円 非常勤講師の平均コマ給 : 1,968円 |
専門学校 | 専任講師の平均年収 : 324.7万円 (※ 回答者5名) 非常勤講師の平均コマ給 : 2,117円 |
高等教育機関(大学) | 専任講師の平均年収 : 380万円 (※ 回答者2名) 非常勤講師の平均コマ給 : 2,276円 (※ 回答者6名) |
日本語教師向けに研修を行う職場 | 非常勤講師の平均コマ給 : 2,933円 (※ 回答者3名のみ) |
回答数が少ない職場もありますが、日本語学校での勤務よりも、専門学校や大学での勤務の方が、年収・コマ給ともに給料が多い傾向にあるようです。
特に、大学の留学生別科等で専任講師になると、年収が大きく上がっています。
【雇用形態別】日本語教師の給料・年収
続いて、雇用形態別のデータを紹介します。
業務委託 : 平均98万円
契約社員 : 平均119万円
正社員 : 355万円
結果を見ると、業務委託での日本語教師よりも、契約社員の方が平均の給料が高い傾向にありました。
契約社員の雇用条件で常勤講師として働く方が一定数いらっしゃることや、長期休暇中は業務の委託が無いなどといった理由が考えられそうですね。
【勤務年数別】日本語教師の給料・年収
続いて、勤務年数と年収の関係性について紹介します。
「勤務年数と比例して、給料は上がるのだろうか?」と気になる方も多いのではないでしょうか?
今回は、「その職場での勤務開始から今までの年数を教えて下さい。」という質問に回答のあった方の回答を集計しました。
専任講師と非常勤講師、それぞれの結果は以下をチェック!
○ 専任講師の平均年収
1年未満 : 305.6万円
1年〜3年 : 315.5万円
3年〜5年 : 320.4万円
5年〜10年 : 324.3万円
○ 非常勤講師の平均コマ給
1年未満 : 1,891円
1年〜3年 : 1,944円
3年〜5年 : 1,970円
5年〜10年 : 1,968円
10年〜 : 2,039円
以上の結果から、勤務年数が増えるにつれ、平均年収は微増していますが、専任講師・非常勤講師ともに、年収は勤務年数とあまり関係ないことが判明しました。
長い期間勤め続けるよりも、どの学校・どの地域で勤務するかが、給料・年収には大きな影響を及ぼすかもしれませんね。
【役職別】日本語教師の給料・年収
次に、教務主任・教務副主任の年収を紹介します。
校長 兼 教務主任 : 平均470万円
教務主任 :平均411万円
教務副主任 : 平均340万円
教務主任と専任講師では、平均年収に約60万円の差があることが分かりました。
一方で、今回のアンケートでは、専任講師と教務副主任では、平均年収に差はほとんど見られませんでした。
日本語学校では、専任講師から校長や教務主任・教務副主任へのキャリアアップを目指すことで、給料のアップを勝ち取ることができるでしょう。そのためには、日本語教師として一定期間の勤務経験が求められますね。
日本語教師の福利厚生 賞与や手当は?
続いて、日本語教師の福利厚生についてお話しします!
ボーナスや住宅手当といった福利厚生はどれくらいあるのでしょうか?
- 時間外業務の手当(残業、授業準備、会議参加、行事参加など)があると回答した人 : 17人(全体の5.7%)
- 役職手当(主任手当・担任手当など)があると回答した人 : 17人(全体の5.7%)
- 住宅手当があると回答した人 : 16人(全体の5.4%)
- 上記以外の福利厚生の例 : 資格(日本語教育能力検定試験)手当, オンライン手当, 多勤務手当, 研究手当, 家族手当 など
時間外業務の手当がある、役職手当があると回答した人は、どちらも全体の5.7%となりました。授業準備や授業以外の業務時間に給料が発生しない場合も多いようです。
前回調査と比較して、1.3%上昇しましたが、依然として日本語教師を取り巻く労働環境は改善が必要だと言えます。
住宅手当があると回答した人は、全体の5.4%という結果にとどまりました。
海外の日本語教師は、住宅手当や住居支給がある場合も多いですが、国内の日本語教師はほとんどの場合で住宅手当・住居支給がありません。
日本語教師の労働環境が整備しきっていない現状において、日本語教師が国家資格化され、待遇面の改善を期待する声も多く上がっていますが、社会的地位の高まりとともに、改善がなされることを期待したいですね。
海外やオンラインの年収・コマ給の実例
回答数は多くはありませんでしたが、オンライン日本語教師や海外日本語教師の実例もいくつか紹介したいと思います。
-オンライン-
Aさん (日本語学校 / 業務委託契約) : 年収10万円
Bさん (オンラインスクール / 業務委託契約) : 年収130万円
-海外 (ベトナム、台湾、フィリピン、中国)-
海外は、回答者が多かった4カ国について紹介します。
○ ベトナム
Aさん (技能実習生送り出し機関 / 正社員 / 日本人部門主任) : 年収200万円
Bさん (日本語学校 / 常勤講師) : 年収223万円
Cさん (大学 / 常勤講師) : 年収159万円
◯ 台湾
Aさん (私塾 / 業務委託契約) : 年収200万円
Bさん (日本語学校 / 常勤講師) : 年収200万円
○ フィリピン
Aさん (日系企業 / 常勤講師 / 教務主任) : 年収292万円
Bさん (日系企業 / 契約社員) : 年収229万円
○ 中国
Aさん (小学校・中学校・高校 / 常勤講師) : 年収500万円
Bさん (大学 / 常勤講師) : 年収240万円
海外は、日本国内で働くよりも給与が低い傾向がありますが、これは国によって物価が異なることが要因としてあります。
また、勤務先や雇用形態によって給与にばらつきが見られます。
おわりに
以上が、日本語教師の年収・給与に関するアンケート結果でした。
この記事を通して、日本語教師を目指している方や、日本語教師への転職を考えている方の少しでも参考になれば嬉しいです!
日本語教師について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください!
まとめ
- 専任講師・常勤講師の平均年収は354万円
- 非常勤講師の平均コマ給は1,988円 (1コマ45分)
- 年収は勤務年数とあまり関係が無い
- 教務主任等、役職を持つことで年収が大きく上がる
- 日本語教師を取り巻く福利厚生には改善の余地あり
三國 紘斗
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