多文化共生/多文化共生教育とは?移民増の日本での取り組み・課題を解説

多文化共生・多文化教育とは?

ニュースや政治において、近年特によく聞かれるようになったのが”多文化共生””多文化共生教育”といったワード。

こちらの記事では、「多文化共生って具体的にどんなことを指しているの?」「国内における多文化共生の現状について詳しく知りたい!」という方に向けて、多文化共生・多文化教育の基本的な知識日本における多文化共生に向けた取り組み・課題などをまとめて解説しています。

この記事を読むことを通して、多文化共生そのものへの理解や移民を受け入れる中で日本が抱える課題について、知識を深めてみましょう!

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2022/4/8

多文化共生/多文化共生教育とは?

多文化共生・多文化教育って?

「多文化共生」には明確な定義づけはされていませんが、2006年に法務省が発表した「多文化共生の推進に関する研究会報告書」においては、以下のように定義されています。

地域における多文化共生を「国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的ちがいを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくこと」と定義

※法務省「多文化共生の推進に関する研究会報告書」より引用

一方で「多文化共生教育」とは、「多文化共生の社会を実現すべく、異なる文化、民族、宗教、生活習慣、価値観に対する理解を図る教育」のことを指しています。

多文化共生/多文化共生教育はなぜ必要なのか?

多文化共生を実現するための取り組みは、なぜ必要なのでしょうか?

総務省が策定した「地域における多文化共生推進プラン(平成18年3月)」によると、多文化共生施策を推進する意義として以下5つの項目を挙げています。

  1. 「外国人住民の受入れ主体としての地域」
    入国した外国人の地域社会への受入れ主体として、行政サービスを提供する役割を担うのは主として地方公共団体であり、多文化共生施策の担い手として果たす役割は大きいこと。
  2. 「外国人住民の人権保障」
    地方公共団体が多文化共生施策を推進することは、「国際人権規約」、「人種差別撤廃条約」等における外国人の人権尊重の趣旨に合致すること。
  3. 「地域の活性化」
    世界に開かれた地域社会づくりを推進することによって、地域社会の活性化がもたらされ、地域産業・経済の振興につながるものであること。
  4. 「住民の異文化理解力の向上」
    多文化共生のまちづくりを進めることで、地域住民の異文化理解力の向上や異文化コミュニケーション力に秀でた若い世代の育成を図ることが可能となること。
  5. ユニバーサルデザインのまちづくり
    国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的差異を認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくような地域づくりの推進は、ユニバーサルデザインの視点からのまちづくりを推進するものであること。

※法務省「地域における多文化共生推進プランについて(平成18年3月)」より引用

異なる文化的背景を持つ人々が同じ一つの社会で生きていくうえでは、外国人が地域社会の一員として生きていけるように体制を整えておくとともに、受け入れる側の地域住民が異文化への理解を深めることもまた大切ですね。

多文化共生/多文化共生教育の歴史はいつから?

日本国内におけて「多文化共生」が注目され始めたのが、1990年代

その背景には「少子高齢化」の問題があり、当時「今後、日本は著しい高齢社会に突入していくだろう」という研究や報告がなされていました。

少子高齢化が進んだ場合、労働者人口が減少することで人手不足や社会保険負担の増加などさまざまな問題が生じることが予測されており、その解決策として「外国人労働者を受け入れる」政策がはじまりました

1990年に「出入国管理及び難民認定法」を改正し、在留資格の再編と「定住者」の在留資格が追加されたことで、ブラジル、ペルーなどからの日系人の入国が急速に増えました。

この頃から外国人労働者の受け入れを始めたことで多文化共生の推進の必要性も高まり、「多文化共生社会の構築」へ向けて政府によるさまざまな取り組みがはじまりました。

今、多文化共生の必要性が高まっている!

日本における多文化共生の必要性

1990年代よりすでに多文化共生の推進は始まっていましたが、近年は特に「多文化共生」という言葉がよく聞かれるようになりました。

その背景には、留学生や外国人労働者などの外国人人口が急増していることが挙げられます。

法務省統計局が公開している令和2年国勢調査「⼈⼝等基本集計」の結果をみると、外国人人口は調査開始の1975年から増え続けており、特に2015年から2020年にかけて急激に増加していることがわかります。

外国⼈⼈⼝及び外国⼈⼈⼝増減率の推移

※出典:法務省統計局「令和2年国勢調査-⼈⼝等基本集計結果からみる我が国の外国⼈⼈⼝の状況-

外国人が急増しているのには、2018年に「特定技能1号」「特定技能2号」の在留資格を新たに創設したことで外国人人材を受け入れやすくしたり、2020年を目途に30万人の留学生受入れを目指す「留学生30万人計画」(2008年発表)により留学生を積極的に受け入れていることが背景にあります。

少子高齢化が進み、さらに外国人を受け入れようという流れの中で、多文化共生に向けた取り組みの重要性も高まっているのが現代の日本なのです。

地方自治体による多文化共生の取り組み例

こちらでは、地方自治体がすでに実施している多文化共生の実現に向けた取り組みとして、いくつかの例を挙げてみました。

やさしい日本語/多言語による情報発信

自治体は災害・生活・行政等の情報を発信する際には「やさしい日本語」や多言語による発信をおこなっています。

「やさしい日本語」とは、1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに考え出されたもので「瞬時に多言語へ翻訳することが難しい震災時に、外国人にわかりやすい日本語で情報を速やかに伝達しよう」という目的で作られました。

このように地方自治体では、日本語が分からない外国人にも必要な情報がきちんと届くような情報発信がおこなわれています。

「やさしい日本語」って?日本語を教える際に知っておくべき?!

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外国人相談窓口の設置

各自治体では、ビザや生活、仕事についてなど外国人が持つあらゆる悩みを相談できる場所として「外国人相談窓口」を設置しています。

異国の地で暮らしていく中で直面するさまざまな問題や不安を解決するために、多くの窓口では多言語による相談を受け付けています。

自治体の共同組織である自治体国際化協会が運営する「多文化共生ポータルサイト」では、全国にある外国人相談窓口を検索することができます

自治体国際化協会「多文化共生ポータルサイト

日本語教室の開講

外国人の日本語教育推進に向けた取り組みとして、区役所や市役所、国際交流協会などでは、無料で参加することができる「日本語教室ボランティア」を開講しています。

ほとんどの場合、日本語を教える担当者は自治体の呼びかけにより集まったボランティアの人たちです。

基本的には日本語教師の資格がなくても誰でも教えられるような体制になっていることもあり、多文化共生の面から考えると「日本語を教える人の質・量を確保すべき」「ボランティアとして教えている現状を改善すべきだ」という声も挙がっています。

日本語を教えてみたい日本人の方や日本語を学ぶ場所を探している外国人の方は、「〇〇(地域名) 日本語教室」で検索すると自宅近くで開講している日本語教室を見つけることができます

多文化共生における現状の課題は?

最後に、多文化共生の実現を目指す国内における「現状の課題」について大きく3点を取り上げてみました。

日本語教育の推進

単一民族国家である日本では英語やその他の外国語を話す人が少なく、基本的には日本語が理解できないと生活していくのが難しいという問題があります。

そのため、外国語での情報発信や多言語で対応できる体制を整えておくことも大切ですが、日本語教育の推進により外国人の日本語能力を図ることも非常に重要な課題となっています。

特に帯同者として日本に移民をしてきた外国人の家族の中には、仕事などで社会へ出る機会もなく孤立してしまっているケースが多いと指摘されています。

子どもの多文化共生教育

日本語教育の推進とも関連してきますが、小・中学校における外国人児童への多文化共生教育・日本語教育の重要性が特に叫ばれています。

親の事情で日本へ移民してきた外国人児童たちの中には、日本語の習得が難しかったり日本文化に馴染めなかったりといった問題を抱えている子どもも少なくありません。

そんな中、文部科学省が公開した令和3年度「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」によると、日本語指導が必要な外国籍の児童は高等学校や大学への進学率が低く、一方で中退率や非正規就職率は高くなる傾向にあることがわかっています。

日本語指導にあたる教師の数が不足していること、そして児童に対して十分な日本語教育が実施されていない点が今後の課題として挙げられています。

外国人の労働環境の改善

外国人の労働環境の改善も、未だ解決の途中にある課題のひとつとなっています。

もっとも深刻とされているのが、「技能実習制度」により来日した技能実習生が劣悪な環境で働いているという問題。

契約内容と実際は異なる業務をしているケースや異常な低賃金によって働いているケース、差別を受けているケースなど、さまざまな問題が取り沙汰されています。

そもそも「日本で培った技能を母国に持ち帰り、自国の経済発展につなげる」という目的で創設されたのが「技能実習制度」ですが、実際は「労働者不足を補うために低賃金で外国人を働かせている」といった批判を国内だけではなく、国際社会からも浴びています

【まとめ】多文化共生に貢献するなら・・

いかがでしたか?

こちらの記事では、多文化共生の歴史や意義、国内の多文化共生の取り組み状況についてご紹介しました。

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日本語教師になる方法には、以下3つの方法があります。

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日本語教師キャリア マガジン編集部

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日本語教師キャリア マガジン編集責任者。これまで1,000名以上の日本語教師との面談実績あり。特に就職や転職の分野に強く、養成講座や検定試験など日本語教育に関わる有益な情報を経験を織り交ぜながら発信中!直近では「日本語教育の質の向上」を目指している。
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