日本語能力試験(JLPT)N5のレベルはどれくらい?実際の日本語力とのギャップに注意

日本語能力試験N5

外国人雇用をする人事担当者、経営者の方、こんなお悩みはありませんか?

  • 外国人が受験する”日本語能力試験”って、どんな試験?
  • N5の難易度はどれくらい?
  • N5の試験問題はどんな内容?
  • 日本語能力試験N5を持つ人は、どれくらいの日本語力が期待できる?

今回は、上記のようなお悩みを解決するための記事となっています◎

「N5合格を目指す学習者のために、試験内容について知っておきたい」という新人日本語教師の方にも参考になる記事です!

この記事では、以下のような内容について”現役日本語教師”がわかりやすく解説します。

  • ”日本語能力試験”そのものについて
  • N5の詳しい試験内容(問題例あり◎)
  • N5の難易度(合格率、合格点)
  • N5レベルに期待できる日本語レベル
  • 実際の日本語レベルとのギャップ

この記事を読めば、「日本語能力試験について」「N5レベルの日本語力について」知ることができます◎

また、これから日本語教師になる事に興味のある方はこの記事も参考にしてみてください◎

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2022/4/8

【日本語能力試験(JLPT)とは】

試験の概要

日本語能力試験は、日本語を母語としない人(日本国籍でも受験可能)を対象にした、日本語能力を認定する語学検定試験です。

【日本語能力試験の試験概要】

  • 主催:公益財団法人日本国際教育支援協会・独立行政法人国際交流基金
  • 1984年から実施されている
  • 国内と世界87カ国・地域で受験可能(2019年時点)
  • 実施時期:基本は7月と12月(年2回)
  • 英語名称:”Japanese-Language Proficiency Test”
  • 日本語教育業界では「JLPT」「日能試」などと呼ばれたりもしている

「日本語能力試験」と「日本語検定」とはどう違うの?と思う方もいるかもしれませんが、違いはこちらです!

【日本語能力試験と日本語検定の違い】

  • 日本語能力試験→日本語ネイティヴでない人が日本語能力を測る試験
  • 日本語検定→日本人が日本語の知識と運用能力を測定するための検定

試験の特徴

この試験は、受験級のレベルが全部で5つります。

「N1、N2、N3、N4、N5」の5段階で、N1がもっとも上の級となっています。

試験構成は、①言語知識(文字・語彙・文法)②読解 ③聴解の3パートに分かれています。

筆記問題はなく、すべてマーク回答式の問題です。

試験構成から分かるとおり「語彙や文法の知識」「読解力」「聴解力」を測ることができる試験で、書く能力」「話す能力」技能を測るパートはありません。

【外国人が日本語能力試験を受験する理由】

留学生のイメージ

「留学時の大学院・大学入学のため」「就職、昇給・昇格のため」という目的で受験をする人が、半数以上を占めています。

具体的には、このような目的・メリットのもとで受験されることが多いです◎

  • 日本の大学へ入学するための条件を満たすため
  • 就職する際に求人要件を満たすため、語学力をアピールするため
  • 社内での昇給・昇格条件を満たすため
  • 「高度外国人材」のビザ優遇措置を受けるためのポイント取得(N1、N2のみ)
  • 日本の国家試験を受験するための条件を満たすため(N1)
  • 日本の中学校卒業程度認定試験一部の試験科目の免除(N1、N2)

N5を取得するメリット

インドネシア人やフィリピン人が、EPA(経済連携協定)に基づく看護師・介護福祉士の候補者になるには、N5程度の日本語レベルが必要とされているため、N5を取得すればこの基準を満たすことができます◎

N5レベルは、中国や韓国といった東アジアの学習者よりも、インドネシアやベトナムなどの東南アジアの学習者が多く受験する傾向にあります。

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【日本語能力試験の受験者数】

日本語能力試験の受験者数は、年々伸び続けています。

理由は、日本語学習者数が年々増加しているためです。

日本語能力試験公式HPより参照

最新データによると、年間の受験者数は約100万人を超えています。(2018年7月と12月実施試験)

そのうち約63%は日本国内の受験者、約37%が海外の受験者となっています。

例年のレベル別受験者数は、多い順から「N2→N3→N1→N4→N5」となっています。

N2受験者がもっとも多く、N5は受験者数がもっとも少ない級となっていますね。

また、レベル別受験者数は国・地域によって偏りがあります。

韓国や中国などの東アジアでは、N1やN2など高い級の受験者数が多い傾向にあり、

タイやベトナムなどの東南アジアでは、N3、N4、N5の受験者数の方が多いです。

【日本語能力試験N5】試験概要

日本語能力試験N5の試験概要はこちらです。

N5 試験概要
言語知識(文字・語彙) 20分
言語知識(文法)・読解 40分
聴解 30分
合計90分

【日本語能力試験N5】レベル・難易度

N5は、N1〜N5のうち最も低い級となっています。

N5に合格すると、「基本的な日本語をある程度理解することができる」レベルであると認定することができます。

「読む」「聞く」能力が、具体的にどの程度なのかは、以下の赤字部分をご確認ください◎

レベル 認定の目安
N1 幅広い場面で使われる日本語を理解することができる
読む
  • 幅広い話題について書かれた新聞の論説、評論など、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章などを読んで、文章の構成や内容を理解することができる。
  • さまざまな話題の内容に深みのある読み物を読んで、話の流れや詳細な表現意図を理解することができる。
聞く
  • 幅広い場面において自然なスピードの、まとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる。
N2 日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる
読む
  • 幅広い話題について書かれた新聞や雑誌の記事・解説、平易な評論など、論旨が明快な文章を読んで文章の内容を理解することができる。
  • 一般的な話題に関する読み物を読んで、話の流れや表現意図を理解することができる。
聞く
  • 日常的な場面に加えて幅広い場面で、自然に近いスピードの、まとまりのある会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係を理解したり、要旨を把握したりすることができる。
N3 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
読む
  • 日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を、読んで理解することができる。
  • 新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができる。
  • 日常的な場面で目にする難易度がやや高い文章は、言い換え表現が与えられれば、要旨を理解することができる。
聞く
  • 日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる。
N4 基本的な日本語を理解することができる
読む
  • 基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる。
聞く
  • 日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。
N5 基本的な日本語をある程度理解することができる
読む
  • ひらがなやカタカナ、日常生活で用いられる基本的な漢字で書かれた定型的な語句や文、文章を読んで理解することができる。
聞く
  • 教室や、身の回りなど、日常生活の中でもよく出会う場面で、ゆっくり話される短い会話であれば、必要な情報を聞き取ることができる。

日本語能力試験公式HPより参照

全体としてみると、N4〜N5が「基本的な日本語を理解できるレベル」N3は「日常会話レベルの日本語」N1〜N2が「日常会話より高いレベルの日本語を理解できるレベル」と設定されています。

N5レベルのイメージ

N5レベルは、以下のようなイメージです。

N5レベルのイメージ

  • 習得している漢字数:約100字
  • 習得している語彙数:約800語
  • 日常で使われる短い文を、ゆっくりとしたスピードであれば理解できる
    (例「教科書を開きます」「席に座ります」「窓を開けます」)

参考として、日本人の小学校1年生が学ぶ漢字数は「80字」語彙数は「数千語〜」となっています。

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2021/11/21

合格点・合格率

N5は180点満点で、合格点は80点です。

全パート合計で80点以上あれば良いというわけではなく、各パートにおいて基準点(言語知識・読解で38点、聴解で19点)以上とれていることも必要です。

レベル 得点区分 得点の範囲
N5 言語知識(文字・語彙・文法)・読解 0~120(基準点38点)
聴解 0~60(基準点19点)
総合得点 0~180

合格率は、毎年約41〜56%です。

平均すると、2人に1人は合格しているというイメージですね◎

その他の級と比較すると、N5の合格率はもっとも高くなっています

【日本語能力試験N5】問題例

実際にどんな問題が出るのでしょうか?

各パートごとの問題例はこちらです!

【言語知識(文字・語彙)】

    の ことばは どう よみますか。

1・2・3・4から いちばん いい ものを ひとつ えらんで ください。

  • 新しい くるまですね。

1 あたらしい  2 あだらしい  3 あらたしい  4 あらだしい

   の ぶんと だいたい おなじ いみの ぶんが あります。

1・2・3・4から いちばん いい ものを ひとつ えらんで ください。

  • わたしは デパートに つとめて います。

1 わたしは デパートで かいものを して います。

2 わたしは デパートで さんぽを して います。

3 わたしは デパートで しごとを して います。

4 わたしは デパートで かいものを やすんで います。

【言語知識(文法)】

(   )に 何を 入れますか。

1・2・3・4から いちばん いい ものを 一つ えらんで ください。

  • 弟は へや(   ) そうじを しました。

1 が  2 を  3 に  4 の

 ★ に 入る ものは どれですか。

1・2・3・4から いちばん いい ものを 一つ えらんで ください。

  • これは きょねん わたし          ★      しゃしんです。

1 買いに

2 日本語の

3 行きました

4   じしょを

もっと詳しく見たい方は、公式HPに各級の問題例が公開されています◎

【N5取得者の実際の日本語力とのギャップ】

人事担当者のイメージ

実は、日本語能力試験に合格しているという事実だけで、本人の日本語能力を判断するのは難しいところがあります。

なぜ日本語能力試験のレベルと実際の日本語レベルにギャップが生まれるのか?

外国人雇用者や日本語教師が学習者の日本語レベルを判断する際に、どんなことを注意したほうがいいのか?

重要なポイントを3つお話していきたいと思います!

N5レベルの「話す」「書く」能力がないこともある!

N5に合格していても、それと同等レベルで「話す」「書く」能力がともなっていない場合があります!

理由は日本語能力試験は、語彙・文法の知識、読む力、聞く力を試す試験であり、「話す」「書く」能力は測定できないからです。

たとえば、「日本人がTOEICの試験である程度の点数が取れたとしても、ネイティヴとの会話がぜんぜんできない!」という話と同じですね。

「話す」「書く」能力は試験だけでは判断できないため、本人との会話を通して日本語レベルを確認することが大切です◎

日本語能力試験は中国語圏の学習者に有利である

日本語能力試験は、中国語圏の学習者にとってかなり有利な試験だといえます。

理由は、中国語と日本語の漢字は表記も意味も似ている(あるいは同じ)ものが非常に多いからです。

  • 中国語と日本語で、意味も表記も同じ単語

大学,学生,世界,学校など

  • 中国語と日本語で、表記が似ている単語

化粧品=化妆品,口紅=口红,解決する=解决

「中国語を勉強したことはないけど、中国語の漢字を見ればなんとなく意味がわかるかも?」と感じた方もいるのではないでしょうか!

このように、日本語と中国語は非常に似た言語なので、その他の言語の母語話者と比較すると、「言語知識」「読解」パートは点数が取りやすい傾向にあります。

私の知り合いで「中国人だけ違う試験内容にしないと、この試験は平等じゃないよ。」と言っていた中国人がいました!

「漢字を見たら意味はわかるけど発音できない」

「読解では、なんとなく全体的な話の流れだけ掴めたから点数が取れた」

中国語圏の学習者にはこんなメリットがある、ということも頭の片隅においておきましょう◎

試験後に学んだ知識を忘れているかも?

試験後に時間が空いて日本語レベルが下がっていたり、試験後に知識が定着していないこともあるので、そこも注意が必要です。

中には「合格するためだけに詰め込んで勉強をする」という学習者もいます。

試験からどれくらいの時間が経っているのか?

試験時ではなく、日常的に定着している日本語の知識や能力はどれくらいなのか?

こういったところも注意しておきたいポイントです!

外国人を雇用する、新しい日本語学習者を受け入れる際には、現時点での日本語レベルを確認するために、日本語能力を測るテストを独自で用意してみるのも良いかもしれません◎

【日本語能力試験N5の日本語レベル】まとめ

  • JLPTは留学、就職、昇給・昇格、ビザ取得等の目的で受験されている
  • N1〜N5レベルがある(N1は最難関)
  • N5は「基本的な日本語が理解できるレベル」
  • N5の合格点は80点、合格率は約41〜56%
  • JLPTは「語彙・文法の知識」「読解力」「聴解力」を測る試験
  • 「話す」「書く」能力は測られていないので注意!
  • 中国語圏の学習者は、点数が取りやすい傾向がある!
  • 試験後に学んだ知識が定着してない場合も!
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日本語教師キャリア マガジン編集部

運営情報
日本語教師キャリア マガジン編集責任者。これまで1,000名以上の日本語教師との面談実績あり。特に就職や転職の分野に強く、養成講座や検定試験など日本語教育に関わる有益な情報を経験を織り交ぜながら発信中!直近では「日本語教育の質の向上」を目指している。
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