日本語教育能力検定試験の勉強をしていると「ポートフォリオ評価」が登場してきます。
ポートフォリオ評価は聞いたことがあるけど…
具体的にどんな評価なんだろう….いまいちよく分かっていない…
このように感じている方もいらっしゃると思います。
本記事は「日本語教育におけるポートフォリオ評価」についてどこよりもわかりやすく解説。
ポートフォリオ評価について学びを深めたい方、日本語教育能力検定試験の対策をされている方、検定試験を受験しようと考えている方は最後までお読みください。
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目次
ポートフォリオ評価とは?
「ポートフォリオ評価」は学習者の学習成果を確認する評価のことです。
ポートフォリオは作文、試験、レポート、プロジェクトなど学習者の成果物を指します。
日本語教育におけるポートフォリオ評価は、学習者が日本語や日本文化に関連した資料を収集したり、記録したりしながら、学習者が自律的に学びを振り返ることが目的です。
ポートフォリオには「評価表」「言語的・文化的体験の記録」「学習の成果」の3つを入れます。
以下、JF日本語教育スタンダードが提案するポートフォリオの目的と構成内容を紹介します。
参考:国際交流基金「JF日本語教育スタンダード」https://www.jfstandard.jpf.go.jp/top/ja/render.do
評価表
ポートフォリオに入れる1つ目は「評価表」です。ルーブリック評価とも言えます。
例として、評価基準、成績表、修了証明書、自己評価チェックリストなどが挙げられます。
日本語の熟達度を自己評価するためのツールが評価表です。
言語的・文化的体験の記録
ポートフォリオに入れる2つ目は「言語的・文化的体験の記録」です。
これは、学習者が教室の外で学んだことをふり返りシートなどを使って記録するものです。
例えば、日本語の漫画を読んだり、アルバイト先で同世代の日本人と会話したり、ラジオでニュースを聞いたり、教室外で積極的に学んだことを言語的・文化的体験の記録として残していきます。
学習の成果
ポートフォリオに入れる3つ目は「学習の成果」です。
例として、作文、試験、レポート、プロジェクト、スピーチの音声などが挙げられます。
学習の成果物一覧という形で目次や見出しをつけることで整理でき、見やすくなります。
ポートフォリオ評価の効果
ここでは、ポートフォリオ評価の効果について解説していきます。
学習に関する情報の共有ができる
ポートフォリオ評価の効果の1つ目は「学習に関する情報の共有ができる」ことです。
ポートフォリオを使うことで、学習目標、学習プロセス、学習成果などを、学習者はもちろん、教師や教育関係者にも共有しやすくなるというメリットがあります。
家族や友人、職場の人などにも、自分が何を学んだかをシェアすることができます。
学習を豊かに評価することができる
ポートフォリオ評価の効果の2つ目は「学習を豊かに評価することができる」ことです。
ポートフォリオの良いところは、教室内だけでなく、教師外で自主的に学んだことも評価の対象となること。これこそポートフォリオが持つ最大の強みだと言えます。
計画表を作成しJLPTに向けて日本語を勉強した、旅行や祭りなどの伝統行事などで日本文化に触れたなど、教室の外で学習者がどんなことに取り組んでいたかが分かるので、教師も学習者の学びをより豊かに評価できるようになります。
自律的学習能力や動機づけを高められる
ポートフォリオ評価の効果の3つ目は「自律的学習能力や動機づけを高められる」ことです。
学習者自身が学習成果や学びのプロセスを振り返ることで、こんなに頑張って取り組んでいたのかと誇らしく思えたり、これからはもっと工夫してみようと新たな気づきが持てたりします。
自律的学習能力や動機づけを高められるのがポートフォリオ評価の醍醐味です。
CEFR・Can-do準拠の教科書3選
ここでは、ポートフォリオ評価の例として、CEFR・Can-do準拠の教科書を紹介していきます。
『できる日本語』
『できる日本語』は、CEFRやOPIの考え方のもと、行動主義に基づいて作成された教科書です。
「自分のこと/自分の考えを伝える力」「伝え合う・語り合う日本語力」を身につけることを目的とし、固まりで話すことやスパイラル展開を重視した、熟達度(プロフィシエンシ―)重視の内容になっています。
「できる日本語」ひろばでは、テキストの特徴として下記8つのポイントが挙げられています。
1) 行動目標(Can-do-statements)が明確である。
できる日本語ひろば コンセプトの説明より
2) 場面・状況を重視し、さらに言語的知識も大切にしている。
3) 学習者にとって必然性のあるタスクである。
4) タスク先行(まずチャレンジ!)で進める。
5) 文脈化を大切にしている。
6) 「固まりで話すこと」を重視している。
7) スパイラル展開を重視している。
8) 「他者への配慮」のある談話となっている。
表2でも示しましたが、課の行動目標が明確になっています。さらに、スモールトピックやタスクごとに「できること」が記されています。
【できる日本語ひろば】 コンセプトの説明より
学習者にとって必然性のあるタスクで学べる点も魅力的です。テキストは日本語版のほかにも、英語、韓国語、簡体字、繁体字、ベトナム語、ロシア語、ポルトガル語、スペイン語、モンゴル語、インドネシア語、ミャンマー語などがあります。
『まるごと 日本のことばと文化』
『まるごと 日本のことばと文化』シリーズは、CEFRの尺度を採用した「JF 日本語教育スタンダード」という言語教育の枠組みに基づいて制作されている教科書です。
実際の場面で日本語を使ってコミュニケーションできるようになることを目指して、日本語を使って何がどのようにできるかという課題遂行(Can-do)の形で到達目標が設定されています。
フルカラーのイラストや写真で楽しく学べたり、教室の外での学習につなげられるように、eラーニング(無料)でもサポートしています。
テキストは、韓国語、中国語、インドネシア語、タイ語、ベトナム語、ミャンマー語、スペイン語、アラビア語などにも翻訳されており、海外でも広く流通しているのが特徴です。
『いろどり 生活の日本語』
『いろどり 生活の日本語』は、外国人が日本で生活や仕事をする際に必要となる、基礎的な日本語のコミュニケーション力を身につけるための日本語教材です。
日本語を使って実際の場面で「できる」こと(Can-do)を増やすことを学習目標としています。買い物をしたり、遊びに行ったり、日本の生活のさまざまな場面で必要となる日本語を学べます。
教材の巻末にCan-doチェックがあり、Can-doが達成できたかどうかを自己評価できるようになっているのが特徴です。「入門」「初級1」「初級2」はそれぞれ9つのトピック全18課から構成されており、「話す」「聞く」「読む」「書く」4技能の活動が盛り込まれています。
主要言語のほかに、ウクライナ語、ウズベク語、クメール語などもあります。
まとめ
本記事は「日本語教育におけるポートフォリオ評価」について解説してきました。
内容をまとめると….
- 「ポートフォリオ評価」:学習者の学習成果を確認する評価
- 「評価表」「言語的・文化的体験の記録」「学習の成果」:ポートフォリオに入れるもの
- 「学習に関する情報の共有ができる」「学習ポートフォことができる」「自律的学習能力や動機づけを高められる」:ポートフォリオ評価の効果
- 『できる日本語』『まるごと 日本のことばと文化』『いろどり 生活の日本語』:ポートフォリオ評価で活用できるCan-do準拠の教科書
自律的学習能力や動機づけを促すポートフォリオ評価ですが、前提として、学習者が教室外でも自発的に日本語を学びたいと思えるかどうかがカギとなります。こちらの記事では「楽しく日本語を学べる方法」について解説しています。
検定試験は毎年10月下旬に開催されています。出願期間は7月初旬から下旬で、令和5年度からオンライン出願へ変更になりました。
池田早織
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