中国人留学生の数は、日本国内の留学生のうち最も多くの割合を占めています。
世界の日本語学習者の割合も、国別にみると最も多いのが「中国」です。
そんな中、中国人学習者を指導する日本語教師・日本語教育関連で働く方で、
「中国人留学生はコロナ後、今後も増えていくの?」
「どんな目的で来日して、どのような進学・進路を目指している学生が多いの?」
このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
そこでこちらの記事では、中国人留学生にまつわる以下の情報について詳しく解説します◎
目次
中国人留学生の数はどれくらい?
令和2年5月1日現在、日本国内にいる留学生総数は27万9,597人です。
そのうち、中国人留学生は12万1,845人と国地域別では第1位となっています。
留学生全体のうち、中国人留学生が43.6%を占めていることになります。
国(地域)名 | 留学生数(人) | |
令和2年度 | 令和元年度 | |
中国 | 121,845 | 124,436 |
ベトナム | 62,233 | 73,389 |
ネパール | 24,002 | 26,308 |
韓国 | 15,785 | 18,338 |
台湾 | 7,088 | 9,584 |
※ 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)『2020(令和2)年度外国人留学生在籍状況調査結果』より参照
中国は、「日本語学習者が世界で一番多い」ということが要因の一つでもありますが、日本にいる留学生の半数近くが中国人留学生であるということが分かりました◎
中国人留学生は、コロナ後も増え続けていく
現在、新型コロナウイルスの影響により中国だけにかからわず、留学生自体の数が減少しています。
そんな中でも、日本へ留学を希望する中国人は多く、コロナ収束後も中国人留学生の数は増え続けるといわれています。
「なぜ、中国人は留学先として”日本”を選ぶのか?」その理由を見ていきましょう!
日本を留学先に選ぶ理由①大学入試で日本語受験が可能に
中国には「高考(ガオカオ)」と呼ばれる大学入試があります。
日本でいう「大学入学共通テスト」のようなもので、毎年6月に実施されています。
受験科目は「国語」「数学」「文系総合/理系総合」「外国語」の4科目があります。
「外国語」は英語、ロシア語、フランス語などがありますが、近年、新しく加わったのが「日本語」です。
もともとは「英語」を選択する学生が大多数を占めていましたが、「漢字圏の中国人にとって勉強しやすい、点数が取りやすい」という理由で「日本語」を選択する学生が急増しています。
今後もこの傾向は続いていき、「日本語を学習する中国人は増え続ける」との見方から、日本へ留学を希望する学生も今後増えていくと予想されています。
※ 「公益財団法人 日本経済研究センター」より参照
日本を留学先に選ぶ理由②日本の大学は学費が安い
中国人留学生の留学先としてもっとも人気なのが、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどの英語圏です。
ですが、上記のような国々の欧米諸国の学費は、日本と比較すると圧倒的に高いという事実があります。
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)は、「日本の学費の目安」を以下のグラフように提示していますが、アメリカの場合は普通の大学でも日本の私立医学部ほどの学費がかかります。
一方で、留学先の中でも比較的学費が安い日本は、学費と生活費は仕送りで賄えるとのことから、今後も留学先として選ばれやすい国となっていくでしょう。
少し前に来日していた中国人留学生は、「アルバイトをして、学費や生活費を稼ぎながら大学に通う」という学生が多かったのですが、近年は中国の経済発展により、仕送りで賄える学生がかなり増えました。
【日本の学費の目安】
※ 「独立行政法人 日本学生支援機構」より参照
日本を留学先に選ぶ理由③学費免除や奨学金が充実
他国と比較して、日本の国立大学は「学費免除や一部免除」、成績優秀者への「給付型奨学金」制度が充実している点も、留学先として選ばれやすい理由のひとつです。
やはり留学にはかなりのお金がかかるため、「学費の安さ」や「学費免除、奨学金制度があるか」など、”コストパフォーマンスが良い”という点で、日本が選ばれやすいという事実があるようですね。
日本を留学先に選ぶ理由④米中対立による影響
中国人留学生にとって最も人気の高い留学先は「アメリカ」ですが、米中対立により、近年は留学生の増加ペースに歯止めがかかっているようです。
そんな中で、アメリカではなく「言語も文化も似ていて、学費も安い日本に留学しよう」と考える学生が増えています。
中国人留学生の進学先
一般財団法人日本語教育振興協会『令和2年度 日本語教育機関実態調査』によると、令和元年度中に日本語教育機関を修了した中国人留学生の進学先は、以下のとおりとなっています。
大学院 | 大学 | 短期大学 | 専修学校 | 各種学校 | 大学別科 | 高校等 | 計 | ||
正規課程 | 研究生等 | 正規課程 | その他 | ||||||
1,594 | 471 | 3,033 | 134 | 66 | 3,516 | 18 | 2 | 3 | 8,837 |
中国人留学生8,837人のうち、進学先として多い順に「専修学校」が3,516人(39.8%)、「大学」が3,167人(35.8%)、「大学院」が2,065人(23.4%)、「短期大学」が66人(0.74%)となりました。
中国人留学生の受験事情として、本格的に大学/大学院の受験対策をしたい学生は日本語学校だけではなく、中国人留学生向けの進学予備校に通って勉強をする人も多くいます。
中国人留学生が抱える悩み
日本に来日する中国人留学生が抱える悩みとして、大きくあるのが「卒業後の進路」と「お金の問題」です。
留学生によくあるのが「文化の違いによるストレス」ですが、日本と中国は同じアジア圏内であり、比較的文化が似ているためそういった悩みを抱える学生は少ないです。
卒業後の進路
少し前までは、中国よりも収入が高いという理由で、留学後は日本で就職をする学生が多くいました。
しかし近年では日本での留学経験を活かし、中国国内で就職をする学生が増えています。
理由は、上海や北京などの大都市から来る留学生にとっては、日本で働くよりも帰国した方が高い給与が望めるためです。
一方で、母国の地元に戻るより日本で働く方が収入が高い場合は、日本で就職を希望する学生も一定数います。
その中では、「日本で就職したくても、なかなか思うように就職先が見つからない」と悩む学生もいます。
実は、日本国内の企業では、専門学校卒業生や学部卒業生に比べて大学院卒業生の需要があまりないとも言われています。
その理由は、学部から留学した学生のほうが、高い日本語力が期待できるからです。
そんな大学院卒業生と日本企業のミスマッチによって、日本での就職を諦めて帰国する学生もいるのです。
アルバイトに頼る学生も
日本へ留学に来る学生は、富裕層ばかりではありません。
以前と比べると減りましたが、親からの仕送りに頼らずに、日本での学費、生活費をアルバイトで稼ぐ学生も多くいます。
そういった中で、日々のアルバイトに追われながら、学業との両立の苦しんでいる学生が数多くいます。
これまでは訪日旅行客へのサービス業などで中国人留学生のアルバイト需要も高かったのですが、コロナ禍ではなかなか仕事が探せずに困窮に陥る学生も増えています。
中国人留学生について【まとめ】
- 中国人留学生はもっとも多く、全体の半数近くを占めている
- 大学入試の影響で日本語を学ぶ学生が急増している
- ほかの欧米諸国よりも日本の学費は安いため、人気の留学先になっている
- 日本の国立大学は、学費免除や奨学金制度が充実している
- 米中対立により、留学先を日本へ変更する人が増えている
- 進学先は「専修学校」「大学」「大学院」が大多数を占める
- 日本で就職したくてもできない学生がいる
- 学費・生活費を稼ぐためにアルバイトに頼る学生も
日本語教師キャリア マガジン編集部
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